好きだから全力で——語学も、部活も。フランスと日本の架け橋をめざして
文学部 フランス文学科 4年

OVERTURE
松尾理央さんは、フランス語圏にある高校で学んだことをきっかけにフランス文学科に入学しました。ネイティブスピーカーの先生の授業を積極的に受講してフランス語力を着実に伸ばしています。部活動では憧れだった合気道を始め、どちらも全力で取り組んでいます。
フランス語との出会いから、文学も学べる青学へ
高校時代はスイスのレザンにある日本の在外教育施設で学びました。校内では英語が公用語として用いられ、英語を母国語とする先生による授業も多かったため、英語への抵抗感が自然となくなりました。留学やボランティアなど国際的な活動の機会にも恵まれ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校への5週間の留学やケニアでの10日間のボランティアに参加しました。ケニアでは小学校の建設に携わり、現地の人々の暮らしや空気感に直接触れられたことは貴重な経験です。ボランティア活動を通して、自分にできることは限られていても、小さな行動が誰かの力になり得ることも実感できました。この経験から、「まずは身近なところから自分の手で幸せを広げ、世界を少しずつ良くしていけるような人でありたい」と思うようになりました。
高校時代を過ごしたレザンはフランス語圏に位置しており、当時は簡単な挨拶程度しかできなかったものの、フランス語の響きや雰囲気に強く引かれ、本格的に学びたいと思うようになりました。また、ケニアでのボランティア活動を通じて関心を持ったアフリカ諸国の多くでフランス語が話されていたことも学びのモチベーションにつながっています。語学とともに文学を学べること、そして読書好きの私にとって魅力的なカリキュラムがあることから、青山学院大学フランス文学科への進学を決めました。
丁寧な指導を受けて、初めてのフランス語も
無理なく身に付け力を伸ばす
青学のフランス文学科は、1年次から文法、読み書き、会話をバランスよく学べて初心者も無理なく語学力を付けられます。初めは、名詞に文法上の性(男性と女性)があり、動詞の活用も6種類あることに驚きました。まずは「何故そうなるのかと考えるより、素直に受け入れていこう」と心がけ、文法や単語を確実に覚えていくよう意識していました。
その中でも特に、必修科目の「フランス語文法演習Ⅰ」をご担当くださった飯田賢穂先生の授業は楽しく、フランス語がとても好きになりました。飯田先生は、一人一人の学生の名前を覚えてくださり、指名しながら「これを読んでみて」「この空欄に入るのは?」と参加しやすい環境を整えてくださいます。学生からの質問に対しても一緒になって考えながら丁寧に説明してくださるので、細かいところもわからないままにすることなく、しっかりと理解を深めることができました。今年度も飯田先生の「フランス文学特講Ⅰ」を受講しており、読者や聞き手を説得し行動させることを目的とした「古典弁論術」を用いた文章を読むという高度な内容に挑戦しています。内容も難しいものが多いですが、その分読むのも考えるのもやりがいがあります。
在学中にフランス語力を向上させることを最も大切にしているので、ネイティブスピーカーの先生によるフランス語での授業を積極的に受講しています。フランス語を聞いて理解する訓練になることはもちろん、話す機会も多く設けてくださるため、毎回力を伸ばせている手応えがあります。特にド・ランクザン マリオン先生のゼミナール(ゼミ)は、フランス語だけでなく、文学作品やフランス文化について多く触れることができ、印象に残っています。2年次の「フランス文化演習Ⅰ・Ⅱ」では、絵画と映画をテーマに、3年次の「フランス文学演習Ⅲ・Ⅳ」では、幅広い時代の詩や小説を取り上げ、時代背景や表現技法とその分析方法を学びました。作品を何となく見たり読んだりするのではなく、より理解を深められるように背景や表現方法なども知ることができたので、今後さまざまな作品を鑑賞する時に楽しみが増えたと思います。
ゼミで出される課題はどれも興味深く、2年次には映画制作にも挑戦しました。自分で脚本を書き、フランス語字幕をつけたミステリー映画を完成させたのです。友人に出演してもらい、授業で学んだクローズアップやパンニングなどのカメラワークを取り入れて撮影し、映像の効果についてより理解を深められました。ド・ランクザン先生の授業では、学生同士で話し合う時間があり、その際に先生が教室内を回りながら声をかけてくださいます。質問がしやすく、わかりやすい表現で説明をしてくださるため、会話の瞬発力や読解の深さがついたと感じます。
勝ち負けのない武道、世界へ広がる合気道の輪
以前から合気道に興味があり、青山学院大学体育会合気道部(以下、合気道部)へ入部しました。それまでスポーツの経験がなく、1日2時間の稽古を週に4日も続けられるか不安でしたが、始めてみるとその心配はすぐに消えました。先輩方は皆あたたかく雰囲気は和やか、師範や部長たちから丁寧なご指導をいただけて、練習もとても楽しいものでした。自然と稽古に必ず出席するようになり、その習慣は今も変わっていません。合気道は、相手と勝敗を競うのではなく、終わりのない自己鍛錬を続けて自分を磨いていく武道です。勝ち負けがない分、自分の上達ぶりを体感するには昇級が一つの目標になります。3年次夏に目標だった初段を取得したときは本当に嬉しく、さらに上を目指したいという意欲が湧きました。
週に2回、先生から技を見せていただき、その後先輩と後輩がペアになって実際にその技を実践する稽古を行っています。見ただけですぐ体現できるものではないので、繰り返し稽古を重ねることで自分の身体にしっかりと染み込ませていく必要があります。技の効き方を意識して集中し続けることが大切ですが、そのためには稽古量をしっかりと確保しなければなりません。稽古量を増やすため、3年次には公益財団法人合気会が運営する本部道場でも研鑽を積み、試験期間で部活動がお休みになる時期も含めて、週6〜7日、稽古に打ち込んでいました。後輩を教える立場となった現在は、伝え方を試行錯誤することも自分自身の鍛錬になっています。
毎年秋には、日本武道館で行われる合気会主催の「全国学生合気道演武大会」に出場しています。この大会は、出場者同士が他の学生の演武を見て学び、お互いに切磋琢磨する貴重な機会です。さらに、毎年青山祭でも演武として披露しています。合気道を知らない人も含めて、学内外のたくさんの方に演武を見ていただけるので、毎年楽しみに入念な準備をして臨んでいます。合気道は、日本だけでなく世界中に愛好者のいる武道です。合気道部は留学生の参加も多く、英語を教えてもらったり日本語を教えたり、フランスからの留学生と友達になったこともあります。世界中に仲間がいる実感を持てるのも、合気道の魅力です。
笑顔あふれる合気道部の同期たちと。左が松尾さん
計画性をもって勉学と部活動を両立。
留学でも積極的な姿勢を心がけて
部活動と勉学を両立するために、日々課題を進めるのにどのくらいの時間がかかるのかあらかじめ計算し、締め切りまでにきちんと完了できるよう計画しながら取り組んできました。勉強と合気道の両立が大変だと感じたことはありません。私がやりたくて選んだことで、何より楽しくて続けていることなので、どちらかを言い訳にしてもう一方をおろそかにしないよう、どちらの時間も大切に全力で取り組んできました。限られた時間を大切に使い、課題にかかる時間を正確に把握するためには、授業にしっかりと集中し理解することが必要です。大切だと思ったこと、わかりやすかった先生の説明はすぐにメモを取るようにしています。わからないことをわからないままにすることなく、理解できないところは必ず質問して解決することも心がけています。
4年次後期には、フランスへの協定校留学をする予定です。一日中フランス語を使う生活の中で、語学力をより高めてきたいと思っています。留学先はフランス中部にあるトゥール大学を選びました。学生数の多い総合大学で、多岐にわたる分野を学べることが魅力です。ド・ランクザン先生のゼミで文学や絵画などの作品を丁寧に分析した経験と知識を生かし、現地では青学で培った「わからないことがあればその場で質問して解決していく」姿勢を大切にしながら、美術館やカフェなども訪れて、日常の中でフランス文化を体感するつもりです。また、道着も持参し、現地の道場でさまざまな人と交流し、合気道を通じた異文化理解でも自分の世界を広げたいと考えています。現地でしか得られない「本物のフランス文化」を余すことなく吸収して、将来、フランスをはじめ世界各国と日本をつなぐ存在になりたいと思います。
2025年度学業成績優秀者表彰の表彰式にて
高校時代に留学やケニアでのボランティアを経験したときから、「自分の身近なところから幸せを広げたい」という思いを大切にしてきました。青学での学びや部活動、そしてこれからの留学を土台に、フランスと日本の架け橋となるような仕事を通じて、身近な人の幸せを支え、社会を少しずつ良い方向へ導いていけるような存在を目指していきたいです。
文学部 フランス文学科
青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤とし、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを通じて、人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。この「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
フランス語はヨーロッパ文明を築いた美しく理性的な言語です。フランス文学科では、初学者にも既習者にも配慮した学習環境を整えています。1・2年次の集中的なカリキュラムでフランス語の基礎力をしっかりと身に付け、その後に多彩な演習と特別講義で知識を深めます。専門分野は「文学」「語学」「文化」から選択でき、実践的なフランス語能力の習得と、国際社会で活躍できる優れた人材の育成を目指します。
