ぶれずにやり遂げた卒論と留学。マンチェスター大学への留学が未来を描く力に
国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科 4年

OVERTURE
自信のあった英語で挫折を味わった悔しさを糧に努力を重ね、世界トップレベルのマンチェスター大学への認定校留学を実現した後藤れんさん。ゼミと卒論にも真摯に向き合い、留学で培った力とホスピタリティを強みに、卒業後はアサヒビール株式会社で豊かな明日の実現を目指します。
小さな成功体験を積み重ね、英語学習での挫折を克服
高校2年生の夏、和歌山県から一人で上京し、初めて参加したオープンキャンパスが青山学院大学でした。国際政治経済学部のEVANOFF, Richard J.先生(現・名誉教授)の異文化コミュニケーションの模擬授業で、「自分と相手の文化が融合することで生まれる第三の文化=サードカルチャー」という考え方に触れ、自分になかった発想に衝撃を受けました。
異文化との最初の出会いは、小学校6年生のときにオーストラリア出身の外国人と同じクラスになった経験です。知っている英単語を並べただけのコミュニケーションでも心が通じ合ったという成功体験が、異文化への興味の原点となりました。高校は、地元の公立校の国際交流科に進学し、異文化への関心を深めていきました。青学での模擬授業は、その興味がさらに知的に刺激され、進路を考えるうえで大きな影響を与えてくれました。
その後、他大学のオープンキャンパスにも足を運びましたが、青学で受けた印象が心に深く残り、国際コミュニケーションに加えて、政治や経済など幅広い分野を学べる国際政治経済学部を第一志望にしました。地元では東京の大学に進学する人は少なかったものの、直感を信じ、迷うことなく青学への進学を目指しました。
                            ところが、入学してすぐに挫折を味わうことになります。得意だと思っていた英語で、帰国子女や内部進学の学生との実力差を目の当たりにし、自信を失いました。1年次前期の成績は中の下、「努力が必要」の境界線ぎりぎりの評価(GPA)に落胆し、当時は、「英語で開講される授業なんて、とんでもない」と思うほど気持ちが後ろ向きになっていました。それでも2年次になると、留学を考え始めた友人たちに刺激を受け、挑戦する意欲が戻り、国際政治経済学部の専門科目を英語で学ぶ「Global Studies
                                Program(GSP)」の履修を決意しました。
一度は自信を失いかけた英語学習でしたが、課題を一つひとつクリアし、留学生と友達になって交流を深めるといった小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ自信を取り戻していったように思います。GPAも上がっていくにつれ、かつて圧倒された帰国子女や内部進学の学生の姿も、次第に「目指すべき存在」として前向きに捉えられるようになりました。青学の環境を最大限に活用しながら、一歩ずつ着実に成長を重ねることができたと感じています。
                        
諦めなかった留学、やり遂げた卒論。ぶれずに挑んだ二つの学び
3年次からは、政治思想史を専門とする押村高先生(現・名誉教授)のゼミに所属しました。私は国際コミュニケーション学科の学生ですが、国際政治学科のゼミを選んだ理由は、押村先生の幅広い知見のもとで学べること、学問領域を越えて他学科の学生とともに議論できる多様性のある環境に魅力を感じたからです。ゼミでは、「グローバル化とアイデンティティの現在」というテーマのもと、7人の仲間と活発な議論を交わすことで、自分の考えを深めるだけでなく、視野を広げることができました。
ゼミ旅行で訪れた湘南・鎌倉。後列中央が押村先生、前列左から2番目が後藤さん
大学でどうしても実現したいことの1つが「留学」でした。2年次で、アメリカの協定校への派遣交換留学に出願したものの、学内選考で実力が及ばず、希望は叶いませんでした。高校時代にも文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」でアメリカ留学に応募したものの、コロナ禍の影響で選考が中止となる悔しい経験をしています。だからこそ、大学在学中の留学を諦めるという選択肢はなく、認定校留学にチャレンジすることを決めました。
認定校留学は協定校留学と異なる、手続きや費用面で高いハードルがあります。だからこそ、挑戦するからには、世界的に最高レベルの評価を受けている大学で学びたい、という思いが強くなり、イギリスのマンチェスター大学を目標に定めました。教育・研究・社会貢献で高い評価を受け、世界大学ランキング(THE)でも「最も国際的な大学トップ30」に選ばれるほど多様性のある環境で、私が興味を持っていた社会学系の授業も充実しているので、学びの環境として理想的だと感じました。
出願準備から合格後の手続まで、すべて自分で対応する必要がありましたが、国際センター提携の留学エージェントのサポートを受けながら、先生方や友人たちに願書や認定校選定理由書など申請書類の添削をお願いする、というように周囲の協力を得て進めることができました。費用面では、青学と留学先の両方に学費を納める必要がありましたが、「青山学院大学産学合同万代外国留学奨励奨学金」の「認定校留学奨励奨学金」に加え、マンチェスター大学への留学が決まったことで、「世界トップレベル大学留学奨励奨学金」も受給することができ、留学費用の約半額を学内の奨学金でまかなうことができました。
留学期間は4年次後期の5か月間。留学に集中するため、卒業を半年遅らせ、就職を1年遅らせる決断をしましたが、卒業論文は渡航前に書き上げました。押村先生が年度末に定年退職されることがわかっていたので、押村ゼミ最後の卒業論文集に自分の研究を掲載したい、学生生活の集大成として形にしたいという強い気持ちがあったからです。また、押村ゼミ最後の代として、ゼミ長を中心に先生の定年退職記念パーティーを企画しました。当日は100人を超えるOBOGが集まり、押村先生から「有終の美の27期」と呼んでいただいたことは忘れられない思い出です。
ゼミ同期の卒業式。私服姿の後藤さん(左端)の卒業は半年後の2025年9月。押村先生(右端)とともに、卒業論文集を手に仲間を見送った
青学でしっかり学べば、
世界トップレベルの留学でも困らない英語力が身に付く
                    マンチェスター大学での留学生活は、毎週15~30ページの論文を複数本読み込み、ディスカッションに臨む日々でした。授業では、文献の内容を、自分の考えやバックグラウンドと結びつけて発言することが求められ、独自性も重視されます。予習段階で10個以上のアイデアをメモし、日本人ならではの視点を意識して発言するよう心がけていました。「これが世界トップレベル大学の環境なのか!」と圧倒される一方で、教授から「現地学生と同等の成果をあげている」と評価されたときには、自分の成長を実感しました。ティーチング・アシスタントを務める大学院生から「あなたの意見で議論が盛り上がったよ!」とフィードバックをもらい、考え抜く力が確実に鍛えられていることを感じました。
旅行で訪れたスイス。ロープウェイから眺めた雪山の絶景が印象的だった。ヨーロッパの他の国々へ気軽にアクセスできるのもイギリス留学の魅力
この挑戦的な留学生活を支えてくれたのは、青学での学びです。特に、留学前の4年次夏休みに履修した「異文化コミュニケーション特講Ⅰ[英語講義・オンライン]」は、革新的な教育モデルで世界的に注目されているミネルバ大学のGeneva Stein先生を迎えた集中講義で、少人数クラス制、英語文献の精読、ディスカッション中心という、海外大学の学習環境そのものを体験できる授業でした。事前に留学先で求められる学習スタイルに触れていたことで、スムーズに適応できたと感じています。
英語力も青学での学びが基盤となりました。私は英会話教室などには通ったことがなく、語学力はすべて青学での学びを通じて身に付けたものです。2、3年次にGSPで多くの英語講義を履修し、IELTSやTOEICでも満足のいく点数を取れるようになっていました。だからこそ、「青学でしっかり学べば、英語圏の留学でも困らない英語力が身に付く」ことを後輩の皆さんに伝えたいです。
寮生活や友人との関係では、自分の「当たり前」が通用しない場面が多くありました。ヨーロッパでは個人主義的な傾向が強く、自分から積極的に関係を築こうとする姿勢を示すことが大切だと感じました。「友人たちに何か貢献したい」という思いから、日本食パーティーを企画し、ヴィーガンやベジタリアンの友人にも楽しんでもらえるよう、野菜だけで作ったお寿司も用意しました。「現地で手に入る食材で何ができるだろう?」と考え、きゅうり、焼きしいたけ、照り焼き味の豆腐などを使った創作寿司を試してみたところ、大好評でした。「豆腐がこんなに美味しいなんて!」と驚かれたとき、相手の価値観に寄り添うホスピタリティの大切さを実感しました。異なる価値観に対する許容範囲の広がりや、新しい文化や考え方に対する柔軟性が高まったことは、留学しなければ得られなかった人間的成長だと感じます。
特別な和食ではなく、日本の“ふだんのごはん”を味わってもらう。箸としょうゆは欠かせない
今振り返ると、留学先にイギリスを選んだことで、ヨーロッパ文化の多様性と豊かさに触れることができました。これは予期していなかった、しかし非常に価値ある出会いでした。
価値に共鳴しながら、ぶれずに描いた“働く自分”の姿が、
理想の就職活動につながる
                    卒業を半年延期したこともあり、就職活動は帰国後に白紙の状態からスタートしました。企業研究を進める中で、「社会を前向きで豊かにすること」や「人とのつながり」に貢献したいという思いが芽生え、営業職を中心に食品メーカーや広告代理店などを志望し、最終的には、アサヒビール株式会社への就職が決まりました。
酒類メーカーに魅力を感じたのは、人と人との交流や、心を動かす価値を大切にしている点に強く共感したからです。私にとって、お酒の場は家族や友人と心を通わせ、心が動く瞬間を生み出してくれる存在で、生活を豊かにする力があると感じています。嗜好品は人によって必要性が異なりますが、だからこそ、お酒を飲まない選択を尊重しつつ、海外のお客様ともその価値を共有し、ともに豊かな明日を作っていきたい。酒類メーカーで働くことによって、自信をもってその魅力を社会に届けることができる、と考えました。
アサヒビールを第一志望にした理由は、留学先のマンチェスターの街のあちこちでアサヒビールの看板や商品を目にしていたことがきっかけです。「Asahi Super Dry」が2022年からプロサッカーリーグのプレミアリーグ「マンチェスター・シティ」のオフィシャルビールパートナーとなっていることを知り、世界で愛されるアサヒビールのブランド力を実感し、ご縁を感じました。
就職活動でも、人を頼ることは大切だと思います。友人に他己分析アンケートを依頼したり、エントリーシートの添削をお願いしたり、OBOGの方に相談したりと、行き詰まったときこそ他者の視点を借りることで、客観的な気づきや自信を得ることができました。また、面接の通過率が低く悩んでいた3~4月は、進路・就職センターで模擬面接指導を受け、「一番伝えたいことを一言でまとめた方が良い」というアドバイスをきっかけに、それまでは自分が話そうとし過ぎていたことに気が付きました。
青学の進路就職支援システム「Web Ash」を活用し、アサヒビールに登録のある校友全員に連絡を取り、OBOG訪問をお願いしました。「事業戦略について話す内容を見直した方がよい」との助言から、財務指標やブランド戦略を徹底的に調べて分析し、自分が社員になったつもりで準備を重ねました。多種多様な観点から親身にアドバイスをいただき、青学の組織力のありがたさを実感しました。
最終面接は、「心から入社したい」と思っている企業の経営層の方々と直接対話できる貴重な機会だと捉えました。評価者の方々に楽しんでいただけるような時間にしようと、意識を切り替えたことによって、自分の思いをしっかりと伝えることができました。
留学によって就職活動の開始が遅れたにもかかわらず、悔いなく、最高のかたちで終えることができました。その要因は、将来を決めるうえで長期的な目線で自分が働く姿を想像し、なりたい将来像は何なのか?をぶれずに考え続けたこと。そして、人に恵まれ、多種多様に支えていただいた周囲の方々のおかげです。
入社後は、営業職を志望しています。国内酒類事業で経験を積み、お客様にとって最も身近な存在として、あらゆる人とつながり、豊かな明日を作ることを目指します。そして、将来的にはアサヒグループの一員としてグローバルに活躍する姿を思い描いています。

後藤さんの就職活動スケジュール
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<4年次> 2024年 7月
留学前に夏季インターンシップへの応募・参加(留学する前日まで参加)
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<4年次> 2024年 9月~2025年 1月
留学
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<4年次> 2024年 12月〜2025年 1月
インターン経由早期選考、海外大生向け選考に参加。SPIなどの対策
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<4年次> 2025年 2月〜3月
卒業延期を選択。OBOG訪問を開始。進路・就職センターで模擬面接練習
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<4年次(2年目)> 2025年 3月〜6月
国内本選考エントリー・面接
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<4年次(2年目)> 2025年 5月末
アサヒビール株式会社から内々定をいただく
 




国際政治経済学部
国際コミュニケーション学科
                    青山学院大学の国際政治経済学部は国際社会への貢献をそのミッションとし、国際系学部の草分けとして創設されました。各学科の学びを深めるだけでなく、有機的に3学科の学びを統合することもできます。グローバルレベルの課題への理解を深め、エビデンスにもとづいて議論・討論するスキルを養成します。世界の多様な人々と協働し、新たな価値を創造する実践力を育みます。
国際コミュニケーション学科では、激変する国際社会において政治学的・経済学的な視点からだけでは扱いきれない国際事象を学問領域として学修・研究します。異なる文化への理解と他者との共存について考え、国際社会が抱える諸問題の解決に貢献できる人材を育成します。卒業生は国際渉外・広報、各種海外協力事業団、通訳・翻訳、マスコミ業界などさまざまなフィールドで活躍しています。
                    
                








































































































































































































