研究とフラサークルで培った文化への想いと知識を、鉄道事業で地域に生かす

掲載日 2025/11/5
No.372
総合文化政策学部
総合文化政策学科 4年
松原 紗南
東京・私立駒込高等学校出身

OVERTURE

文化を深く学びたいと総合文化政策学部に入学した松原紗南さん。以前からの問題意識やフラサークルでの活動と学びを有機的に繋ぎ、文化と抑圧をテーマに研究を進めています。卒業後は、鉄道会社で観光やまちづくりを通して文化の継承と発展に貢献していきます。

文化を深く多角的に学べる総合文化政策学部へ。
卒論テーマも進路選択の参考に

幼い頃からクラシックバレエに取り組み、美術や音楽鑑賞にも親しんできた私は、大学では文化そのものを深く学びたいと考えるようになりました。青山学院大学の総合文化政策学部は、美術、建築、音楽など幅広い分野を、歴史や経済面を含めた多角的な視点で学べる点が魅力的でした。

高校時代に、ボランティアでミャンマーの学生にオンラインによる日本語指導を行ったことは、進路を考える上で大きな経験となりました。活動は開始して間もなくミャンマーでのクーデターの影響で中止となってしまったのですが、「社会状況によって文化を学ぶ機会が奪われる」という現実に直面して、強い衝撃を受けました。この気付きは現在の研究にもつながる問題意識となり、「文化と抑圧」は大学での学びの軸になっています。

進学先選びでは、先輩方が取り組んだ卒業論文のテーマも参考にしました。総合文化政策学部は、「バレエ」「社会と文化」「難民問題」など、多彩かつ私の関心に合ったテーマがあり、自分が学び研究したいことに思い切り取り組める環境だと思いました。

成長による体型変化でクラシックバレエが思うようにできなくなり、バレエに代わる新しい舞踊を探していて出会ったのがフラダンス(フラ)です。大学生活では、勉学とともに、「フラサークルUluwehi愛好会」(ウルヴェヒ)での活動にも力を入れてきました。

「フラサークルUluwehi愛好会」(ウルヴェヒ)での練習風景。前列左端が松原さん

舞踊文化の弾圧を多方面から研究。
学びを通して将来の目標も明確に

2年次から、多様な文化や価値観が共存する多文化社会の実現をテーマとした飯笹佐代子先生のゼミナール(ゼミ)に所属しています。ゼミでは、毎週、社会課題や時事問題をテーマにしたディスカッションを行い、並行して各自が独自のテーマで調査・研究を進めて、学年末にレポートを提出します。

私の研究テーマは、高校時代に関心を抱いた「文化と抑圧」と、好きな舞踊を結び付けた「舞踊文化における弾圧の歴史とその継承」です。2年次にはフラ、3年次は盆踊りを題材にしました。フラは、ハワイに入ってきた宣教師などから「みだらなダンス」とみなされ、日本の盆踊りは「風紀を乱す」として禁止された歴史がそれぞれあります。現在は、卒業論文に向けて、前述の歴史事実に加え、舞踊等の公演が難しくなっているロシアやウクライナのバレエ団やダンサーを通して、現代の舞踊文化が受けている抑圧についても考察を進めています。

レポート執筆では、当初、事実の説明や引用ばかりになり、うまくまとめられずに苦労しました。そこで、飯笹先生からも推薦していただいた「アカデミックライティングセンター」に相談、添削を受け、歴史事実や引用を中心としながらも、自分なりの視点を入れたレポートを書けるようになりました。現在も折に触れて指導を受けています。

学ぶ上では、研究テーマに関連する科目を積極的に履修し、テーマを深められるように意識しています。経済面からアートを考える「美術史(2)」は、大きな影響を受けた授業です。アートと社会、経済がどのように関わっているのか知識を得られ、地方のアートイベントについての学習やアートオークションの見学も印象に残っています。企業経営とアートとの関連を学んだことで、「将来、アートや文化を大切にする企業に就職したい」という目標を明確にすることができました。また「観光産業論」では、コンテンツツーリズムの企画立案とプレゼンテーションを経験し、卒業後にも生かす手応えを得られました。

アカデミックライティングセンターでの丁寧なアドバイスで、レポートや論文を書く力を養えた

フラ競技会4連覇に貢献。広報係としても活躍する

フラサークル「ウルヴェヒ」の活動では、夏に開催される全国の学生競技会「カレッジフラコンペティション」が強く印象に残っています。3年次には団体部門4連覇をかけての出場となり、例年以上のプレッシャーがかかる中での練習となりました。フラではわずかなずれが完成度を損ないます。ミリ単位で動きを揃えるため、夏休みには毎日8時間の練習を積み重ねていきました。

しかし、この努力の裏でチーム内には乗り越えるべき課題が山積みでした。経験や学年の差から遠慮が生まれて意見を言い合えず、次第に不信感が積もってしまいました。このピンチを乗り越えるため、まず話し合いの機会を増やしました。意見を受け止め、各自の思いを正直に表明できる環境をつくるうちに、練習中にも活発に意見が飛び交い、踊りにも自然と一体感が生まれました。

そして迎えた本番、心を一体にした私たちは念願の4連覇を達成しました。その結果以上に、素晴らしい仲間と出会えたこと、支えてくださった人たちと喜びを分かち合えたことが、何よりの宝物だと感じています。

カレッジフラコンペティションでは、ハワイ文化の正しい理解も重視され、踊る曲の意味や背景、衣装や振り付けの意図をまとめた「ファクトシート」の提出が義務付けられています。3年次には団体部門優勝とともに「ファクトシート賞」も受賞しました。

私がフラの抑圧された歴史を知ったのは、ファクトシート作成のため曲の意味や時代背景を調べる中でのことでした。現在の研究テーマはこの発見から生まれました。学習内容とサークル活動を関連付けたことで、自分の問題として文化の抑圧と継承を考察することができたと思います。

サークルでは広報係としてSNSでの情報発信にも力を入れました。画像や動画を制作して活動を広く知らせることに魅力を感じ、フォロワーやイベント来場者が増えていく喜びは格別でした。どうすれば多くの人に伝わるのか悩み工夫した経験は、将来の仕事にも生きると思います。

団体部⾨優勝・ファクトシート賞に輝いた、カレッジフラコンペティション2024での記念写真。前列左から2番⽬が松原さん

文化と観光への関心から始め、目標を実現できる東武鉄道へ

入学時から、将来は観光業界で働くことを目標にしていました。美術館を目的にした旅行など、文化をテーマにした観光が好きで、私にとって「文化」と「観光」は密接に関わる分野です。大学で文化を学び、その知識を将来の仕事に生かしたいという思いを常に抱いていました。

個別のサポートだけでなく、ガイダンスや講座も役立ちました。企業の方とより近い距離で話せる学内企業説明会では、東武鉄道株式会社との出会いがあり、観光関連以外の業界についても目を向け視野を広げる機会となりました。また、苦手意識のあったグループディスカッションに自信をもって臨むことができたのは、対策講座で丁寧なフィードバックをいただけたからです。

就職活動の初期には、航空会社や旅行会社を考え、いくつかの企業のオンライン説明会に出席していました。選択肢を広げるため、鉄道会社の説明会に参加したのが3年次10月です。そこで知ったのは、鉄道会社が単なる移動手段の提供者ではなく、人々の日常生活を支える不可欠なインフラであるということでした。パンデミックなど観光業が厳しい状況においても、生活基盤として機能する強みは大きな魅力です。沿線地域と協力してのまちづくりや文化発信など、幅広い事業に携われる可能性にも興味を引かれ、交通インフラ業界を第一志望にしました。

中でも、青学での学びを通して明確になった「文化を大切にする企業に就職したい」という目標に合致する企業として注目したのが東武鉄道株式会社です。東武鉄道の1DAY ビジネス体験で、浅草と日光・鬼怒川方面を結ぶ特急列車「スペーシアX」に乗車した際、沿線地域の伝統工芸をイメージした車内装飾や、沿線の人々とともに開発したクラフトビールが提供されているのを目にして、地域の文化を大切にし、さらに豊かにしていこうとする姿勢が印象に残りました。以来、東武鉄道の説明会には全て出席し、積極的に質問を重ねる中で業務内容や働き方への理解を深め、第一志望の企業に決めました。内々定をいただけた時には、感激すると同時に、これまでの学びを生かして、特にアートや文化の分野で会社の発展に寄与したいという意欲が湧いてきました。

カレッジフラコンペティションで優勝した際、副賞としていただいたホテルの宿泊券を活用してハワイへ。アラモアナショッピングセンターのステージで踊った。左から3番目が松原さん

大学のサポートに支えられ、学びを社会で生かす未来を切り開く

エントリーシート(ES)の添削指導や精神的な励ましなど、進路・就職センターには、さまざまな面で力になっていただきました。当初私は、ESに自分の言いたいことを詰め込んでいただけでしたが、指導をいただいて、企業風土に合わせて内容を吟味したESを書けるようになりました。添削を何度も繰り返し、1社ごとに最善のESを仕上げた結果、書類選考は安定して通過することができました。就職活動に注力する人が多い3年次の夏、フラの全国大会に出場することを迷っていた私に「就職活動はできる範囲で」と助言をいただけたこと、他人と比較して焦りが出たときに相談にのっていただいたことも心に残っています。おかげで自分らしく就職活動に取り組むことができました。

採用面接では、アートを取り入れたまちづくりや観光施策、文化の保存など、学んだ内容や考えを話すと、面接官の方に関心を持っていただけました。青学での多角的な学びが、社会で通用する価値あるものだと確信できた経験です。就職後、観光やまちづくり事業で企画立案する際には、面白さや収益性といった表層的な視点にとどまらない、歴史背景からも課題を抽出できる力を強みにしていきます。フラサークルで培ったチームワークの経験も積極的に役立てていくつもりです。

就職後は青学での学びと経験を生かして、人々の生活を支えつつ、文化を守り育てる仕事に貢献していくことが目標です。いつか後輩から「青山学院大学で学んだら、こんな素敵な人になれるんだ」と思ってもらえるような存在となれればとても嬉しいです。

松原さんの就職活動スケジュール

  1. <3年次> 2024年 6月

    ゼミの4年生が開催する進路報告会に参加、情報収集を開始

  2. <3年次> 2024年 7月

    興味のある企業のオンライン説明会に参加し始める

  3. <3年次> 2024年 8月

    フラサークルの全国大会に打ち込む。旅行会社のインターンシップに1件のみ参加

  4. <3年次> 2024年 9月〜11月

    学業やサークルと両⽴できる範囲で、説明会に参加。鉄道会社に志望を絞る

  5. <3年次> 2024年 12月

    東武鉄道の1DAYビジネス体験に参加

  6. <3年次> 2025年 1月〜2月

    オンライン説明会や就活イベントに積極的に参加、さまざまな業界の知識も身に付ける

  7. <3年次> 2025年 2月〜3月

    ES提出、⼀次⾯接、⼆次⾯接ラッシュ
    インターネットで集めた企業ごとの質問・回答例を整理し、自分用の面接対策ノートを作成

  8. <4年次> 2025年 4月

    最終⾯接ラッシュ。東武鉄道株式会社から内々定をいただき、就職活動を終了

総合文化政策学部

青山学院大学の総合文化政策学部では、“文化の創造(creation)”を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究。芸術・思想・都市・メディアなどの広範な領域を研究対象とし、各現場での“創造体験”とともに知を深めていくチャレンジングな学部です。新たな価値を創出するマネジメント力とプロデュース力、世界への発信力を備えた“創造的世界市民”を育成します。
「文化の創造」を理念に、文化力と政策力を総合した学びを探究します古典や音楽、映像、芸能、宗教、思想、都市、ポップカルチャーなどあらゆる「創造」の現場が学びの対象です。どうすれば文化や芸術によって社会をより豊かにすることができるのか。創造の可能性を模索し、自身のセンスを磨きながら、創造的世界市民として社会への魅力的な発信方法を探ります。

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