言語の壁を越え、学科横断で磨いた会計スキルを武器に、日本での就職を実現
マーケティング学科 4年
(ジョ カケン)

OVERTURE
1年次の授業を入り口に、会計の面白さに引き込まれていった台湾出身のHSU HUA CHIEN(ジョ カケン)さん。たゆまぬ努力とチャレンジ精神で日本語力と会計の知識、実践力を磨き、株式会社クボタの財務経理職に就職を決めました。さらなるスキルアップへ意欲は増すばかりです。
教育環境に感動し、志した日本への留学
私の家族も日本が好きで、子どもの頃に何度も日本を旅行し、おもてなしの精神に憧れを持ちました。中学生になると、日本のアイドルグループのファンになったことをきっかけに、独学で日本語の勉強を始め、高校2年生の時に、日本の高校で1ヶ月間の交換留学プログラムに参加しました。日本の高校では、進路相談が行われている時期でした。台湾では、学歴を最優先にする教育を受けてきましたが、日本の高校では、生徒の興味・関心、個性に合わせて進路の選択肢があることに、とても驚き、感動しました。「日本で大学生活を送りたい。留学したい」と本気で考えるようになり、それからは、日本語の学習に打ち込みました。台湾での独学を続けながら、高校3年生のときに「日本語能力試験(JLPT)」の最上級レベル「N1」に合格することができました。

日本の大学について調べる中で、母の友人が「青山学院大学は、学部数が多く、キャンパスがきれいで立地も良い」と教えてくれました。その方は、日本留学を経て、現在も日本で働いています。当時の私は広告に興味があり、消費者の価値観やニーズが多様化し、トレンドの移り変わりが加速している中で、消費者の好みをどのように把握するのかを論理的に学びたいと考えていました。青学はマーケティング学科がある数少ない大学のひとつで、マーケティングを体系的に学べるだけでなく、実践的な授業も充実しています。理論と実践の両面からスキルを身に付けられる環境に大きな魅力を感じ、すぐに第一志望に決まりました。高校卒業後に来日し、「日本留学試験(EJU)」の準備をするために日本語学校に1年間通い、希望どおり経営学部マーケティング学科に合格することができました。
入学後は、まず言語の壁にぶつかりました。私が学んできた日本語は、教科書どおりの日本語だったため、友人たちの話す「若者言葉」が理解できず、会話の輪に入れるようになるまで時間がかかりました。授業では、先生がお話になる日本語は理解できるものの、専門用語がわからないため、調べながら何度も資料を読み返す必要がありました。そこで、予習を徹底し、あらかじめ知らない言葉を確認しておくことで、授業の理解度を高める努力を続けています。
また、経営学部はレポート課題が多いことも大変な点でした。文章の構成や日本語表現に迷うことがよくあり、友人に相談したり、図書館で文献を参考にしたりしながら、何度も推敲を重ねて完成させました。
来日した家族・親戚に青山キャンパスを案内した際のいとことの一枚
企業の経営判断を支える会計の面白さ。夢中で学び、知識を深める
専門用語に苦戦しながらも、マーケティング学科で学ぶ時間はとても充実していました。1年次に履修した必修科目「マーケティング・ベーシックスA」では、アディダス
ジャパン株式会社からいただいた課題「MIYASHITA
PARKにある直営店に、Z世代をターゲットにしたコーナーを作る」に対して、チームで提案を行うプロジェクトに取り組みました。
まだ、マーケティングの基本的なプロセスも知らない状態でしたが、チームメンバーと何度も議論を重ね、試行錯誤を繰り返していくうちに、「マーケティングとは何か?」を、実感を持って学ぶことができたと思います。日本人学生とのグループワークは、最初は緊張しましたが、メンバーがやさしく親切で、協力しながら楽しく取り組めたことも印象に残っています。
経営学部での学びの転機になったのが、1年次に履修した必修科目「アカウンティング基礎Ⅰ」の授業でした。簿記と会計の基本的な原理を学び、会計が企業の経営状況を把握し、改善へと導くための重要な情報源であることを知りました。そこに面白さを感じたことで、マーケティング以上に会計への興味・関心が強くなりました。
マーケティング学科に所属しながらも、2年次以降は「原価計算論Ⅰ・Ⅱ」「中級簿記Ⅰ・Ⅱ」「会計情報論Ⅰ」など会計分野の科目を中心に履修していきました。「財務会計論Ⅰ・Ⅱ」では、実際の企業の財務諸表を自分の視点で分析する経験を重ねて、財務諸表が経営の意思決定を支える重要なツールであることを認識しました。
学べば学ぶほど会計の勉強に没頭していき、2年次の夏休みには独学で日商簿記2級に合格しました。1年次の「アカウンティング基礎Ⅰ」で学んだ簿記3級レベルの内容を復習していたら楽しくなり、勉強し続けて「チャレンジしてみたら合格した」というのが現実です。振り返ってみると、それだけ夢中になっていたのだと思います。会計関連の授業で得た知識が資格取得にも役立ちました。
3年次からは、矢内一利先生のゼミナール(ゼミ)に所属し、財務会計について学んでいます。経営学科のゼミなので、ゼミ生の中でマーケティング学科の学生は私だけですが、会計に興味を持つ友人に出会えたことをうれしく思っています。学科の垣根を越えて、関心がある専門科目が履修できるのは、青学の経営学部の本当に良いところです。
矢内一利先生とゼミのメンバーたち
3年次前期は、自分たちで作成した経営計画書を入力すると、翌期の決算書や財務諸表が自動的に表示される「ビジネスゲーム」を通じて、会計の仕組みを実践的に学びました。業績が好転することもあれば倒産してしまうこともあり、毎回の結果に一喜一憂しながら、なぜそのような結果になったのかを分析することで、会計の理解を深めることができました。シミュレーションを通じて、数字の裏にある経営判断や戦略の重要性を体感できたことは、非常に貴重な経験でした。
後期には、専門書の輪読を通じて学びを深めました。発表でうまく話せるか不安で、台本を作って何度も練習を重ねてから授業に臨んでいました。準備には時間がかかりましたが、その分、自分の考えを日本語でわかりやすく伝える力が身についてきたことも、ゼミでの成長だと実感しています。
「ビジネスゲーム」は企業経営のシミュレーション・ゲーム。プレイヤーとして、コンピュータ上の架空の業界で企業を経営する。ゼミで作成した経営計画書などの資料
適性を確かめるため参加したインターンシップで実践力を強化
大学卒業後の進路について真剣に考えるようになったのは、3年次が始まる少し前です。青学のオリジナル就活手帳「Ash青山学院大学就職活動ハンドブック」が自宅に届き、意識せざるを得なくなったというのが正直なところです。この手帳には、就職活動の詳しいスケジュールのほか、自己分析や企業研究に使えるテンプレートなど、就職活動に必要な情報がコンパクトにまとめられていました。何から準備を始めればよいのか迷っていた時期に、道しるべとなりました。
ただ、この当時は大学院で勉強を続けたい気持ちもあったので、進学するか、台湾に戻って就職するか、あるいは日本で就職するか、ずいぶん悩みました。最終的に日本での就職にチャレンジしようと決断した理由は、卒業してすぐに台湾に帰ってしまうのは「もったいない」と考えたこと、そして、一日も早く実践の場で経理職としての力を身に付けたいと思ったことです。また、台湾では新卒社員が一斉に入社する文化がなく、日本のような新卒対象の研修制度が整っていないため、成長の機会が多い日本の職場環境に魅力を感じたことも、決断の後押しとなりました。
本格的に業界研究や企業研究を始める前に、「経理の仕事が本当に自分に向いているのか確かめたい」という思いから、3年次の夏、アプリやWEBの制作・開発を行うベンチャー企業で、経理職の長期インターンシップを始めました。
請求書の処理や月次決算の補助など、実際の業務を通じて経理の仕事の全体像を理解することができました。これまで大学で学んできた会計の知識を、実務に生かすことができたことに、大きな喜びを感じました。
また、ビジネス日本語やマナー、さらに「報告・連絡・相談」といった日本企業で重視されるコミュニケーションにも慣れることができ、就職活動に向けて大変に有意義な経験となりました。このインターンシップを8ヶ月間続け、実務経験を積んだことは就職活動において大きな強みとなりました。
就職活動を進める中で、エントリーシートの書き方や不明点は、青学の会計プロフェッション研究科を修了し、日本企業で働いている台湾人の先輩に親身に相談にのっていただきました。私は心配性な性格で、日本語での面接に不安があったため、先輩にお願いして、模擬面接に何度も付き合っていただき、受け答えや話し方の精度を高める努力を重ねました。
境遇が近い方からのサポートはとても心強く、留学生の友人とも面接練習や情報交換をしたり、相談をし合ったりしていました。就職活動は長期にわたるため、精神的に疲れてしまうこともありましたが、そういう時には友人と話したり、一緒に出かけたりすることが、よい息抜きになりました。
青学で仲良くなった友人と一緒に(右がジョさん)
世界のどこでも活躍できる経理人材を目指して
内定をいただいた株式会社クボタ(クボタ)の採用試験では、財務経理部門への初期配属が確約された「財務・経理」コースが設けられていたので、このコースに応募しました。
台湾でも幼い頃から、家電製品をはじめとする高品質な日本製品に触れる機会が多く、そうした製品を手がける日系メーカーで働きたいという思いを持っていました。特にクボタは、「食料」「水」「環境」の事業領域で、社会課題の解決につながるソリューションを地球規模で提供する企業であり、その姿勢に強く魅力を感じました。グローバルに展開しながらも、社会に貢献するという明確な使命を持つ企業で働けることに、大きな意義を感じています。
面接では、大学での学びや長期インターンシップでの経験を積極的にアピールするとともに、台湾から日本に来て、言語習得、学業、就職活動といったさまざまな壁に挑戦してきたチャレンジ精神を精一杯伝えました。また、自己分析にも時間をかけ、台湾人の先輩と模擬面接を繰り返し行ったので、自分の強みや価値観を明確に言語化できたことが、内定獲得につながった大きな要因だったと感じています。
留学生活を振り返ると、入学直後は相談できる友人もいなかったので、不安や戸惑いを感じることが多くありましたが、同じ学部・同学科のチューターの方が、履修登録の方法から授業でわからないことまで、気軽に相談に乗ってくださり、安心して学びを進めることができました。
また、「青山学院大学産学合同外国人留学生グローバル奨学金」や「文部科学省外国人留学生学習奨励費」を受給できたことで、経済的な不安を抱えることなく、勉学に専心できたことにも感謝しています。「インターナショナルコモンズ」など、留学生同士や日本人学生との交流の場も整っていて、青山学院大学は留学生に対するサポートが充実している大学だと実感しています。
卒業後は、クボタのグローバルな事業展開の中で、多様な人々と関わりながら働くことを楽しみにしています。企業の経営を数字の面から支える経理のプロフェッショナルを目指し、会計の知識とスキルにさらに磨きをかけていきたいと考えています。具体的な目標は、日商簿記1級の取得を目指します。そして、国際的に通用する米国公認会計士「USCPA (U.S. Certified Public Accountant)」にも挑戦したいと考えています。将来的には、こうした知識とスキルを生かして、世界のさまざまな国や地域で貢献できる人材になりたい。そう考えています。
日本語学校時代から大学1年次まで参加していた国際交流学生団体のイベントにて。他大学にもたくさんの友人ができた(ジョさんは後ろから2列、右から4人目)
ジョさんの就職活動スケジュール
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<3年次> 2024年 8月
長期インターンシップ開始
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<3年次> 2024年 9月
業界・企業研究、自己分析
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<3年次> 2024年 10月
冬インターンシップエントリー
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<3年次> 2024年 11月
進路・就職センターの説明会参加
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<3年次> 2025年 1月
ES提出、適性検査
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<3年次> 2025年 2月
冬インターンシップ参加・面接
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<3年次> 2025年 月
株式会社クボタから内々定をいただく
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2025年度)のものです。
経営学部 マーケティング学科
経営学部は「マネジメント」(経営管理)を中心に学ぶ学部です。青山学院大学の経営学部では、優れた研究者が教員として揃う質の高い教育環境のもと、企業や組織、ひいては個人をマネジメントするために必要な経営学の知識を、体系的に身に付けられるカリキュラムを用意しています。デジタル化時代に応えるべくデータ分析にも力を入れており、その学びを通して論理的思考力を養います。
時流に流されない基礎理論をしっかり学び、その上で人々が幸福に生活できる在り方を追求する、これが「青山マーケティング」の理念です。マーケティング学科では、いつまでも色あせない理論と、それを生かすための知識やデータ分析などのスキルを体系的に身に付けます。そして、それらを実習系の授業で実践し、あらゆる社会で生かせる力を養っていきます。









































































































































































































