人権を軸にした学びで養った、他者の立場を尊重し社会を俯瞰する力

掲載日 2026/2/9
No.381
法学部
ヒューマンライツ学科 3年
塚本 優笑乃
東京・私立青稜高等学校出身

OVERTURE

塚本優笑乃さんは、ジェンダーやLGBTQについて学びたいと、法学部ヒューマンライツ学科に入学。幅広い学問分野に触れ、学生同士の議論や意見交換を通して学びを深めています。さらに、キャンパスツアーガイドボランティアで、青山学院大学の魅力を伝える活動にも力を入れています。

幅広い学問分野に触れ、複雑な人権問題に取り組む力を付ける

高校生の頃、姉の話や同性婚訴訟のニュースを聞いて、ジェンダーやLGBTQについて学びたいと思うようになりました。初めは他大学の社会学部を志望していましたが、青山学院大学の法学部ヒューマンライツ学科なら、ジェンダーやLGBTQについて人権問題として法学を軸に学べると知り、進学を決めました。

さらに、同性婚訴訟のニュースで谷口洋幸先生の解説を拝見し、「この先生のもとで学びたい」と思ったことも、進学を決めた大きな理由の一つです。

1年次は、法学に加えて政治学や経済学、公共政策など、多様な分野の科目が必修で、授業についていくのに必死でした。人権問題は法律の問題だけでなく、複雑な社会構造の上に生じるものです。思い返すと、1年次に幅広い分野の基礎を身に付けたからこそ、3年次の今、社会全体を見て人権問題を扱うことができるようになってきたのだと感じます。

興味のある分野に取り組める毎日は充実していますが、学びを深めるほど、人権問題がいつまで経っても解決しない現実に、無力感や悲しさを抱いてしまいます。そんなときは、やりきれない気持ちを抱えながらも、読書や映画で気持ちを切り替えつつ、「少しでも良い社会の構築に貢献したい」と学び続けてきました。

その中でも、2年次に受講した「国際法AB」は、世界の問題に対して、条約や制度がどのように力を発揮し得るのかを学んだ印象深い授業でした。手立てがないように見えて無力感を抱きがちな紛争についても、「取り決められたルールがあり、不公正の是正に努力が積み重ねられている」という現実を知り、希望を持つことができました。学ぶ内容は膨大でしたが、頻繁に行われる記述式の小テストのおかげで、理解した内容を自分の言葉で書いて知識を定着させることができました。

ジャーナリズム論」では、光州事件*を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』や、ベトナム戦争の機密文書を扱った『ペンタゴン・ペーパーズ』などの映画を見て、社会問題と、その中で果たされるべきジャーナリズムの役割を深く考えることができました。もともと映画は好きでしたが、それまではエンターテインメントとしての側面しか見ていなかったと思います。しかし、映画には忘れてはならないことを人々に伝える力もあると認識を新たにしました。

*1980年に韓国・光州市で起きた民主化運動に対する武力弾圧事件

「LGBTQと表現規制」の調査から、日常に潜む人権課題を研究

3年次から、目標としていた谷口先生のゼミに所属しています。谷口先生は、ジェンダーやセクシュアリティーに関する人権課題を専門にされており、その分野に関心を持つ学生がゼミで学んでいます。

今年度は、3〜4人のグループでテーマを決めて調査と発表を行いました。中でも「LGBTQと表現規制」の調査は、卒業論文にもつながり、特に印象に残っています。

私はSNS分野を担当し、「表現規制」に関する調査では、2015年のアメリカにおける同性婚合法化から10年を経た現在の逆行する動きについて調べました。また、「芸能・エンタメ」分野の調査では、レインボーカラー(多様性を象徴する虹色)の文化について取り上げました。この調査を通し、SNS上での表現を一運営企業の人権問題ではなく、社会全体の課題として捉える必要性を強く感じました。卒業論文では、SNSで広がる「LGBTQと誹謗中傷」をテーマに研究する予定です。

このテーマ決定には、NHKのドラマ『虎に翼』の影響もあります。日本で女性として初めて弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルとしたこのドラマは、人権を学ぶ中で無力感に苛まれたときにも、学び続ける力を与えてくれた作品です。劇中でLGBTQの話題が出た際、SNS上では内容の切り取りによる誤解や、当事者を傷つける投稿が多く見られました。日常的に接するSNSでこのような状況が生じる理由を知りたいと思ったことが、研究への動機となっています。

他のグループの発表から、視野を広げる経験も得られました。例えば、トランス女性(出生時は男性とされたが、自らを女性と認識している人)のスポーツにおける人権課題についての発表では、トランス男性が話題にならないことに疑問を持ち、質問を通じて議論を提起することができました。今後も、ふとした違和感に気づき、それを共有して皆で考えていく姿勢を大切にしたいと考えています。

ゼミは、意見を自由に言い合えるのびのびとした雰囲気

高校生の悩みにも寄り添えるキャンパスツアーガイドボランティア

人権についての学びと並行して、キャンパスツアーガイドボランティア(CTGV)の活動にも力を入れています。高校生の頃、他大学のオープンキャンパスで「ガイドをしている学生が素敵だな」と感じた経験から、入学希望者に青山学院大学での学生生活の魅力を伝えたいと思い、1年次から参加しました。

キャンパスツアーでは、施設や教室、歴史ある建築の特徴などを紹介しながら学内をめぐります。私がツアーを担当する際は、建物や施設の紹介だけでなく、リアルな学生生活の様子も交えて話し、参加者の皆さんが学生生活をより具体的にイメージできるよう工夫しています。食べることが好きな私は学生食堂の紹介の際、ただ情報を説明するのではなく、「学生食堂がSNSで発信する日替わりメニューのチェックが私の日課です」と日常を添えて説明しています。すると、皆さんから笑顔がこぼれて嬉しくなります。

高校生から受験勉強や学科での学びについて相談を受ける機会も多く、迷いや悩みに寄り添えることもCTGVのやりがいの一つです。ツアー終了後に「ありがとう」「楽しかった」と声をかけてもらえることが、活動を続ける原動力となっています。

2年次から3年次にかけては代表を務め、組織改革や新しい試みにも取り組みました。3年次夏のオープンキャンパスでは、従来2グループだったツアーの同時催行を、3チームに増やす挑戦をしました。他グループとルートが重ならないように調整するのは難しかったものの、メンバーと密にコミュニケーションを取り合って無事成功させることができました。代表としての責任感から、つい全てを抱え込みがちな私ですが、考えを共有し、協力し合うことの大切さを改めて認識できた経験となりました。

現在は、新たな企画として、メタバースを活用したキャンパスツアーを計画中です。代表は退きましたが、新企画の準備や、代表だけに負担が集中しない組織づくりなど、後輩たちが活動をスムーズに進められるようサポートを続けています。

新入生のためのSTART UP ガイド | AGU NEWS

キャンパスツアーガイドでは、施設の説明と、その補助として画像を見せる役目を分担して案内する。画像提示役を務める塚本さん

伝える力と、多様な視点から考え俯瞰できる力を強みに

多くの人の「当たり前」の中には、無意識の偏見が潜んでおり、その無意識は、人権問題としての多くの課題が存在しています。ヒューマンライツ学科では、そうした社会構造に組み込まれ、見えにくくなっている差別や不平等について学び、考えることを重ねてきました。その経験を通して、常識をそのまま受け入れるのではなく、「本当にそうなのか」自分自身で調べて考える習慣を身に付けることができたと思います。

自分だけの視点ではなく、多様な立場や背景から物事を捉え、俯瞰して考える力も身に付きました。これは、1年次に幅広い学問分野に触れたことや、ゼミや授業で他の人の意見を聞き、議論を重ねてきたことなど、学生生活のさまざまなシーンが土台となっています。

こうした姿勢は研究だけでなく、日常の人間関係にも生かされています。CTGVで意見が対立したときや、友人づきあいの中で「なぜそんなことをするのだろう」とモヤモヤした思いを抱いたときにも、自分の意見を押しつけたり憶測で相手の考えを決めつけたりすることなく、複数の視点で状況を検討し、相手を尊重して対話することを意識するようになりました。

また、自分自身も知らないうちに偏見を持つ可能性があると気づかされたことも、大きな学びです。今後取り組む、LGBTQをめぐる誹謗中傷の研究においても、小説やドラマを鑑賞する際にも、私自身が当事者の存在を「消費」してしまっていないか、問い続けていきたいと思います。

卒業後の進路はまだ模索中ですが、俯瞰して全体を見る力や他者の立場に立って考える姿勢を生かし、活躍していきたいと考えています。小さな違和感を見過ごさず、言語化して周りと共有する意識を持つことで、自分が活躍する場所を、公正で誰もが過ごしやすい環境に整えられると思います。

また、CTGVで培った「伝える力と協働する力」を強みに、就職活動ではエントリーシートを書く際にも、CTGVでの活動について重点的に紹介し、アピールしていきたいと思います。どんな場所、どんな仕事でも、人と人とをフェアな関係でつなぎ、より良い社会を築くことに取り組んでいくつもりです。

CTGVの活動では、伝える力を養い皆で協力する大切さを学ぶことができた

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2025年度)のものです。

法学部 ヒューマンライツ学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度開設の「ヒューマンライツ学科」があります。
ヒューマンライツ学科は、人間が人間らしく生きるために欠かせない「人権」について、法学をはじめとした多様な学問分野から学ぶ日本初の学科です。人権は国の最高法規である憲法で保障されているだけではなく、国際社会の普遍的な価値でもあります。さまざまな人権問題の解決・改善のために法をどのように生かしていけるかを意識的に学び、政治学や経済学、公共政策などの観点からも学際的にアプローチします。

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