掲載日 2026/1/23

法学部 ヒューマンライツ学科
個々の「違和感」と「迷うこと」を大切に、自由に世界の諸問題を追究する

大道寺准教授からの
Message

法学部 ヒューマンライツ学科 准教授
大道寺 隆也

本ゼミナール(ゼミ)の研究領域は「国際関係論」です。「国と国との政治的な関係を扱う」と思うかもしれませんが、環境、文化、経済など、幅広い分野を横断的に扱う学問です。本ゼミでは、各自が抱く違和感を大切に、自由に研究テーマを決定し、切磋琢磨しながら学んでいます。

Q.ゼミの研究内容について教えてください。

国際関係論は、とても幅広い学問です。ゼミ生たちは、各自の関心に合わせて自由に問題を発見し研究テーマを決めています。これまでの研究テーマの例として安全保障、人権、ジェンダー、貧困と開発、教育などがありました。

このようにテーマを列挙しても、自分とは遠い話に感じるかもしれません。しかし、国際関係論のテーマは私たちの身近な暮らしとも深くつながっています。例えば、ふだん手に取る製品やその原材料が外国産である場合、もしもその国がジェノサイドのような人権侵害や、他国への攻撃につながる政策をとっていたら、私たちの購買行動が間接的にその政策を支えることになるかもしれません。私たちの生活はさまざまな形で世界の動きと結びついています。国際関係論を学ぶことで、こうしたつながりを認識することができて、世界を見る視点が変化していくでしょう。

私自身は、迫害などから逃れ国境を越えて保護を求める難民などの人々が追い返されたり不当な身柄拘束を受けたりする、移動者の人権侵害とその是正を研究テーマにしています。

このテーマにたどりついたのは、難民が「自分の運命を自分で決められない状態」に違和感を持ったからです。どこかの国で市民権を持つ国民であれば、選挙や裁判で不満を表明する道筋があります。しかし難民は自分の命や運命が自分とは遠いところで決定されて、異議を申し立てる道筋もありません。このギャップをどうしたら埋められるのか、研究を続けています。

ゼミ生たちも、ゼミで読む文献、ニュース、日々の暮らしの中で、自分が持つ違和感を大切にして各自のテーマを発見しています。

Q.ゼミでの指導で意識されていることはどのようなことでしょうか。

先輩と後輩がお互いに教え合い、高め合う場にしたいと考え、3・4年合同のゼミにしています。3年生は4年生をロールモデルにして、自身の関心がどこにあるのか、どんなことに違和感を持つのかを探っていくことができます。4年生は3年生からの素朴な質問を受けて、自分が実は深く考えられていなかったポイントに気付くことができます。例えば「難民とは誰のことですか」というような、当たり前に見える疑問も、核心をついて研究のブラッシュアップのきっかけになることもあります。だから私は、素朴で単純な質問こそ歓迎するようにしています。

異なる学年の学生がともに学ぶ上では、知識や経験に差があっても、それぞれが迷わず自分の学びを進められるよう、次に何をすれば良いかが見える「道筋」を示すことを意識しています。3年次前半は自分の中の違和感や憤りを探り、自分なりのテーマを発見して言葉にするところから始めます。3年次後半以降は発見したテーマの先行研究を読み、分析を進めていきます。私は先行研究に学ぶことを「先人の知恵を借りる」と呼んでいますが、漠然とした違和感や、問題意識を整理する際にとても役立ちます。その後、4年次には、分析を進め、より洗練された研究に仕上げていきます。

教員が答えを教えるのではなく、自分で調べ、考えて進む力を育てることも重視しています。トライ&エラーを重ねながら自分自身で問題を見つけて進んでいってほしいのです。このゼミで身に付けた知識そのものは、卒業後の活躍場所で必ずしも直接的に役立つものではないかもしれません。しかし、多くの卒業生から「ゼミで培った自分で問題を発見・設定し、学び、調べてまとめる力は、就職してからもとても役立っている」と言われます。

Q.ゼミでの学びは、どんな学生に向いていますか。

私のゼミでは「迷う」過程を大切にしていて、迷いながらも自分で考え抜こうとする人に向いています。「やりたいこと」が決まっていなくても構いません。何をしたら良いかわからないながらも、試行錯誤して自分の頭と言葉をフルに働かせてほしいと思います。選考においても、GPAなどの数値評価よりも「今感じているモヤモヤをどうにかしたい」という思いを重視しています。もちろん理路整然と問題意識や目標をすぐに説明できる人も素晴らしいのですが、そういう人にも、本当にその目標に進むのか、問題意識はその方向で良いのか、揺らいで迷って考えてもらうようにしています。

「迷う」と、人は自分の足跡を振り返り「なぜこうなったのか」と考えるようになります。まっすぐ進む人は振り返ることが少なく、周囲を見渡さないために視野が狭くなることもあります。迷いながらも最終的に卒業論文という成果に辿り着いた経験は、今後の人生において大きな自信になるはずです。

興味・関心の面では、私が難民を含む移動者の人権問題を研究していることもあり、国際的な不正義に関心を持つ学生が多くいます。不正義を考える上で「自分も知らないうちに誰かを傷つけたり抑圧していたりするかもしれない」という視点を常に持っていてほしいと学生に伝えています。

国際関係論は、世界の問題を読み解くと同時に、自分の生き方にもつながる学問です。このゼミは、自分の中の違和感や引っ掛かりに向き合える場として設けています。先輩も後輩も一緒に、楽しく「迷い」ながら学びたい人は、ぜひ来てください。

学生からの
Message

法学部 ヒューマンライツ学科 3年
東京・私立文化学園大学杉並高等学校 出身
三橋 さくら

高校生のとき、人権について深く考えるようになりました。授業で、世界トップレベルのオリンピック選手でも先進国と発展途上国とでは、選手の練習やケア環境に大きな差があることを学び、国籍によって不平等が起こる現実に驚きました。そこから、人権を学際的に学ぶことができるヒューマンライツ学科に興味を持ち、子ども、性的マイノリティ、貧困など、さまざまなテーマに細かくフォーカスして人権について学べることに魅力を感じて進学を決めました。

入学後、特に興味を持ったのは、名古屋出入国在留管理局で起こったウィシュマ・サンダマリさんの事件のような、出入国管理における人権問題です。大道寺先生の「政治学入門」で学んだ「構造的暴力」にも衝撃を受けました。構造的暴力とは、殴る、蹴るなどの暴力と異なり、貧困、飢餓、抑圧など、社会構造そのものが人々の生命や暮らしを脅かすものです。「誰もが知らないうちに、構造的暴力に加担する加害者になり得る」という指導は心に残り、先生のもとで学びたいと思いました。

ゼミでは3年次前期に、グループで文献を読み発表します。私は出入国管理について関心があり、難民問題に関する文献に触れたいと考えていましたが、今回はジェンダーに関する文献のグループに入りました。これをきっかけにジェンダーの問題にも関心を持ち、「出入国管理におけるジェンダー視点の閑却*」という研究テーマが定まりました。出入国管理の現場では、女性に対してさらに人権侵害が起こりやすいのではないかという視点で考察しています。

大道寺先生のご指導は、一人ひとりの興味と成長に合わせて、自分で答えを見つけられるように配慮されています。大道寺先生の勧めで、3年次ながら論文にまとめ、学部内の懸賞論文に応募し、賞をいただいたことは自信になりました。懸賞論文もその一つですが、いつも今の自分にとって挑戦しやすいハードルを与えてくださり、挑戦しながら学ぶことができています。先生が担当している大学院の授業の聴講も勧めていただき、より専門的な論点に接し、成長の手応えを感じています。

また気軽に質問できる先輩が身近にいる環境も心地よく、「ファッションと国際関係論」「恋愛リアリティショーと国際関係論」など、私たちの日常生活にも関わる身近なテーマの発表に触れることもあり、とても刺激になります。

大道寺先生の講義やゼミでの活動を通して、現場の実態に関心を抱きました。自らが直接、難民支援に関わることはできないかと考え、外国人労働者や難民の支援を行うボランティア団体「BOND(バンド)」に参加しました。入国管理局で在留資格取得の支援を行ったり、ウィシュマさんの事件を周知するイベント等を行ったりしています。研究倫理上、活動で伺ったお話を論文には書きませんが、現場を知ることで、研究へのモチベーションがより高まっています。

卒業論文では、出入国管理でのジェンダー視点について、身体と心の性別が異なるトランスジェンダーにも視野を広げて考察する予定です。今は学ぶことや研究がとても楽しく、納得いくまで追究したい思いが高まっており、卒業後は大学院に進学して研究を続けるつもりです。

*重視されず、いい加減に扱われること

※科目のリンク先『講義内容詳細』は2025年度のものです。

法学部 ヒューマンライツ学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度開設の「ヒューマンライツ学科」があります。
ヒューマンライツ学科は、人間が人間らしく生きるために欠かせない「人権」について、法学をはじめとした多様な学問分野から学ぶ日本初の学科です。人権は国の最高法規である憲法で保障されているだけではなく、国際社会の普遍的な価値でもあります。さまざまな人権問題の解決・改善のために法をどのように生かしていけるかを意識的に学び、政治学や経済学、公共政策などの観点からも学際的にアプローチします。

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