遠くへ行くことで、自分に近づく。コンフォートゾーンを越える旅は、必ず価値がある
(アメリカ ヘンドリックス・カレッジ)

OVERTURE
米国でコンピュータサイエンスを専攻するジャック・スミスさん。コンフォートゾーンを越えてより自立した自分を見つけるために、アーカンソー州を離れ、本学相模原キャンパスに交換留学中です。STEM中心の世界から抜け出し、地球社会共生学部でリベラルアーツの学びを選択しました。
5日間の大阪ホームステイから始まった日本への興味
私が日本に興味を持ったきっかけは「言語」でした。日本語だけでなく、中国語や韓国語にも魅力を感じていました。難しいことに挑戦するのが好きな性格なので、これらの言語はとても魅力的に感じたのです。
高校のカリキュラムに日本語の授業が加わったとき、迷わず受講しました。当時は日本について詳しく知っていたわけではありませんが、大阪の高校とのオンライン交流がきっかけで状況は一変しました。日本の高校生と実際に日本語で会話し、彼らの生活を聞くことで、それまで単なる単語の暗記だった学びが、「人」との「会話」を通じた生きた体験へと変わったのです。
高校で「大阪への5日間のホームステイ」が発表されたとき、私は迷わず応募しました。現地の家庭に滞在し、温泉を体験し、京都を訪れるなど、関西の暮らしを肌で感じることができました。しかし、心に深く残ったのは観光地ではなく、日本の人々が互いに示す礼節と穏やかさでした。
同時に、現実も痛感しました。日本語を1年間学んできたにもかかわらず、会話はほとんど理解できませんでした。日本人が実際に日本語を話すスピードは速く、教科書には書かれていない、聞いたこともない言葉のつながりに圧倒されました。それでも私を突き動かしたのは、私が日本語を話そうとしたときの日本人の反応です。たとえ拙い日本語でも、笑顔で喜んでくれる。その瞬間、完璧さではなく「つながり」が大切なのだと感じ、もっとその体験をしたいと思いました。
帰国後、大阪で出会った友人たちと交流を続けることが、私と日本とのつながりの大きなモチベーションになりました。日本語の勉強に疲れたとき、「次に彼らに会うときこそは本物の会話をしたい」と強く思ったのです。
高校時代から専攻していたSTEM分野を継続するために進学したヘンドリックス・カレッジのカリキュラムには、日本語の授業がありませんでした。日本語を独学するのは決して簡単ではありませんでしたが、YouTubeでネイティブの会話を聞き、リスニング力を鍛えました。
そして、大学で交換留学のチャンスが訪れたとき、日本に行くことに迷わず挑戦しました。東京にある青山学院大学は、国際的志向の学生が多くビジネス環境が整っていて、私にとって理想的な場所だと感じました。
渋谷の喧騒より「平安」を求めて相模原を選んだ理由
青山キャンパスではなく相模原キャンパスを選んだのは、少し珍しい選択かもしれません。渋谷の活気あふれる華やかな学生生活の様子を聞けば、世界中の学生がワクワクするでしょう。しかし、私は違いました。アーカンソー州の田舎で育った私にとって、24時間動き続ける大都市のペースは合わないと感じていました。学ぶなら、落ち着いた郊外での生活を望んでいたのです。東京都心の活気は「必要なときに行ける距離」で十分でした。
実用面も考えました。相模原キャンパスには理工学部をはじめ理系の学生が多く、同じ興味を持つ仲間と出会える環境があります。もちろん渋谷にも魅力はありますが、1年間滞在する私にとって、相模原キャンパスの緑が多く広々とした環境は日本の生活に慣れるために最適でした。
実際に来てみると、期待以上でした。静かな街並み、季節ごとに景色が変わるキャンパスの並木道、寒い日にゆっくり思索にふけることができる暖かくて居心地の良い図書館、コスパ抜群のフィットネスセンター、そして日本人学生と英語・日本語を練習できるチャットルーム。施設はアメリカの大学よりはるかに清潔で現代的で、集中できる雰囲気があります。まさに私が求めていた「平安な環境と、必要なときにアクセスできる都市の活気」のバランスでした。
標高1,252mの大山(神奈川県)。登山は大変でしたが、山頂からの景色は本当に素晴らしく、とてもやりがいがありました
リベラルアーツと日本語学習でコンフォートゾーンを越える
地球社会共生学部(GSC)を選んだのは、自分の殻を破るためです。高校以来、私はコンピュータサイエンスと数学に集中してきました。しかし、社会に出る前のすべての時間を一つの分野に賭けるのはリスクだと感じ、STEMと人文系をバランスよく学びたいと思ったのです。
この変化は大きな意味を持ちました。コンピュータサイエンスでは「正解」を効率的に見つけることが求められます。しかし、GSCの授業で学んだのは、現実世界はそんなに単純ではないということ。「War Memory in Modern Japan[英語講義]」「Introduction to Japanese Politics and Society[英語講義]」の授業では、歴史は白黒ではなく、複数の視点や複雑な動機、文脈が絡み合っていることを知りました。
こうした思考は、より良いエンジニアになるために不可欠です。テクノロジーは社会に影響を与えるものだからこそ、広い視野を持ち、人間の複雑さを理解することが重要だと感じています。
中でも印象的なのは「日本学B」の授業です。日本文化を講義で学ぶだけでなく、伝統舞踊や講談、書道を実際に体験します。こうした実践型の学びは、教室では得られない記憶に残る経験です。
日本語学習も本格的です。アメリカでは読解や語彙に重点を置いていましたが、今は会話とリスニングに集中しています。数か月でリスニング力は大きく向上しましたが、流暢に話すのはまだ難しく、そのプレッシャーが逆にやる気を高めています。
「国際経営戦略論[英語講義]」では、6人の日本人クラスメートと同じグループに所属しています。留学生は私だけなので、受け身になりがちですが、英語で議論を円滑に進めたり、対話の方向性を保ったりするために、時には積極的に立ち回ることが必要だと学びました。
言語の壁や文化的な違いがある中で、この経験は効果的な異文化コミュニケーションについて多くのことを教えてくれています。特に感心するのは、日本の学生の時間管理の正確さです。終了時間が近づくと、メンバー全員が議論の整理しようと促してくれます。これは、だらけがちなグループプロジェクトとは大きく異なる点です。
また、日本語を使える場面では、どこでも練習の機会だと考え、日本語で話すことに挑戦しています。友人たちは、レストランに行けば私に日本語で注文するよう促してくれますし、日本語を使うときの気恥ずかしさを乗り越える手助けもしてくれます。会話の一つひとつが練習であり、すべてのやり取りが上達のチャンスです。
友人たちと一緒にスキーを学べたことは最高でした。地球社会共生学部の友人ナウファルさん(インドネシア、ガジャ・マダ大学からの交換留学生。写真中央)、彼のチューターの小原直也さんは理工学部生(写真左)
遠く離れた地で学んだ「自立」
「自立」の意味は、実家から6,000マイル離れると大きく変わります。アメリカでは、困ったことがあれば大学寮の近くに住む両親に頼れました。しかし、日本では、銀行口座の開設や役所の手続きなど、すべて自分で解決しなければなりません。
最初は圧倒されましたが、人は思ったより早く適応します。来日後1か月で生活のリズムが整い、滞在している寮も「仮住まい」から「家」に変わりました。ベランダから見える公園と遠くのビル群は、今では私の日常の一部です。寮ではさまざまな大学の学生と共同生活を行い、日本文化の「他者への配慮」を強く感じます。静けさを保ち、共有スペースをきれいにし、秩序を守る。そのおかげで、集中できる環境が整っています。
そして私のお気に入りは、深夜の散歩です。人混みもなければ、何かに期待することもなく、ただただ静かな街と自分の思考だけ。スタンフォード大学の研究によると、歩くことで創造力が60%向上するそうです。アーカンソーでは車の中で音楽を聴いて気分転換していましたが、日本では安心して夜、外を歩くことができます。長い一日の終わりに、木々を眺め、音に耳を傾け、「平安」を感じる――これが私の心を整える方法になりました。
深夜の散歩中、寮の近くで撮った写真。とても落ち着いた雰囲気が気に入ったので撮影しました
「遠くへ行くことで、自分に近づく」
コンフォートゾーンに留まっていては、自分を知ることはできません。成長には、未知の世界に飛び込む勇気が必要です。日本での経験は、アーカンソーでは得られなかった学びを与えてくれました。
私は、静かな環境でこそ力を発揮できることを知り、日本食の多様性に驚き、文化の違いをすぐに判断せず「なぜ?」を考えるようになりました。
言語の壁も、私にとってはそれが教師のような存在です。日本語で話すと、日本人は英語で話すときとは全く違う反応を示します。完璧でなくても、努力を喜んでくれる。この学びは、言語だけでなく異文化交流全般に通じます。東京では、日本文化だけでなく、タイ料理やインドネシア料理など、アジア全体の文化に触れられます。これはアーカンソーでは決してできない体験です。
私が特に印象を受けたのは、これまで出会った日本人学生の多くが、私の地元の学生と比べてとても国際的な視野を持っていることです。中学生の頃にタイへ修学旅行に行った経験や、高校時代にヨーロッパで短期留学や交換留学をした話を、ごく自然に語ってくれます。
一方、私の出身地では、高校生のうちに海外へ渡航する経験さえ、多くの人にとって珍しいことでしょう。こうした環境の違いが、物事の捉え方にも少なからず影響しているのかもしれません。アメリカでは、隣国のカナダやメキシコよりも離れた世界に視野を広げる機会が少なく、こうした環境の違いがアメリカ人としてのもののとらえ方が狭まる原因となっているのかもしれません。
この交換留学は、それまでに私が蓄えてきたテクノロジーの知識に、人間的な視点を加えてくれました。批判的思考やコミュニケーション能力は、将来、私が働くことを希望しているFinTech*分野で不可欠です。日本で培った適応力と問題解決力は、グローバルな市場で技術を開発するための強みになります。また、世界有数の金融拠点である日本で学んだ経験を通して、アジア市場についての理解を深めることができています。この経験は、将来においてきっと自分の強みとなり、大きな価値を持つものになると感じています。
* FinTech…金融Financeと技術Technologyを組み合わせた造語。金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動き
そして、日本で感じる「平和」は、単なる「争いのない状態」ではなく、心が満たされる感覚です。この「平和、平安」の感覚を、これからも大切にしていきたいと思います。
留学を迷っているすべての人へ。もちろん不安はあります。言語の壁、ホームシック、時には迷子のような気持ち。でも、その困難こそが成長の場であり、機会です。ここで出会った留学生の誰もが「AGUに来てよかった」と言っています。行かない後悔の方が大きいかもしれません。未知の世界に踏み出さなければ、自分の可能性を知ることはできません。
「遠くへ行くことで、自分に近づく」――その旅は、必ず価値があります。

| MON | 2 11:00〜12:30 | 日本語(ⅣF)A |
|---|
| TUE | 2 11:00〜12:30 | 日本語(ⅣF)B |
|---|---|---|
| 3 13:20〜14:50 | War Memory in Modern Japan [英語講義] |
| THU | 2 11:00〜12:30 | Introduction to Japanese Politics and Society [in English] |
|---|---|---|
| 3 13:20〜 14:50 | 国際経営戦略論[英語講義] | |
| 4 15:05〜16:35 | 多文化共生論[英語講義] |
| FRI | 3 13:20〜14:50 | Cool Japan: Contextualizing Contemporary Popular Culture [英語講義] |
|---|---|---|
| 4 15:05〜16:35 | 日本学B |
カリキュラム & 履修科目 (交換留学生)




インタビュー動画
国際センター
国際センターは、大学の国際化に関わる教育支援と国際人育成をサポートしていきます。主な業務は、海外協定校・認定校への「留学生派遣」と、海外協定校からの「留学生の受入れ」、私費留学生のサポート、そしてそれらの学生向けの奨学金業務、夏期春期に行われる短期語学・文化研修などのプログラムの企画・運営等を担います。各国の多様な文化や慣習および学生の異なる価値観を尊重しながら、海外大学と本学との連携をさらに強化・拡充していきます。









































































































































































































