ウォール街で働く醍醐味と重責。「誠実さ」を大切に、世界の市場と向き合う

掲載日 2026/4/24
No.389
三菱UFJ信託銀行株式会社
三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店
社会情報学部 社会情報学科 2015年卒業
福泉 弘樹

OVERTURE

三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店で市場業務を担う福泉弘樹さん。「正解のない市場」で世界のプロと渡り合いながら、日々大きな刺激と成長を得ています。青学で培った分析力や伝える力、「誰かのために」という精神を支えに、お客様と社会への価値創出にまっすぐ挑んでいます。

世界金融の中心地で市場業務を担う刺激に満ちた日々

ニューヨーク支店に配属されて3年になります。私は市場部門で、支店全体の資金の過不足を管理する業務を主に担当しています。現地のお客様にお貸しするためのドルを、他のお客様や米国の銀行、ファンドから調達する一方、余った資金は他行への貸出や米国債への投資に回すなど、資金の過不足を管理・運用していくことが役割です。お客様から預かった大切な資産を扱う仕事であるため、責任の重さを常に感じています。入行以来ずっと、市場関係の業務に携わってきましたが、株や米国債の運用を始めた頃は、夜中でもマーケットが気になって眠れないほどでした。同時に、経験を重ねても必ず利益が出るとは限らない「正解がない市場」というフェアな世界に、次第に大きな魅力を感じるようになりました。

NY支店同期(中央が福泉さん)

ニューヨークのウォール街は、まさに世界金融の中心地です。周囲には、リーマンショックやITバブルといった教科書で学んだような出来事を、実際に最前線で体験してきたベテランが数多くいます。そうした方々と日々議論できることは、私にとって非常に貴重な機会です。自分自身の知識が深まることはもちろん、その議論の内容が世界に発信されていく、そのスケールの大きさにいつも強い刺激を受けています。

社会動向を読み解くおもしろさにふれた金融工学のゼミ

高校時代は理系クラスでしたが、実験に没頭したり数式と格闘したりする自分の姿がどうしても想像できず、文理融合の学びができる社会情報学部への進学を選びました。伏屋 広隆先生の金融工学のゼミでは、数字を使って社会の動きを読み解く面白さに引き込まれ、研究にのめり込むようになりました。経済の動きを数式に落とし込み分析する力や、その結果を専門外の人にも分かりやすく伝える力を磨けたことは、今の仕事に直結しています。多額の資金を取り扱うからこそ、自ら考え、分析し、その判断を周囲にきちんと説明できる力が欠かせないと、日々実感しています。

就職活動では、早い段階から金融業界に絞っていました。当時、社会情報学部には三菱UFJ信託銀行から大学教員に転じた教授がいらして、先生のお話を伺うなかで好感を抱いたことが最初のきっかけです。信託銀行は、一般的な銀行業務(預金・貸出・為替)に加えて、お客様の財産(金銭、不動産、有価証券)を預かり、管理・運用する「信託業務」を行うことができる点が大きな特徴です。長期的な財産管理、とりわけ高度な資産コンサルティングに強みを持っています。さらに三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は国内外に幅広いネットワークをもつ総合金融グループです。そのなかで、自分が活躍できるフィールドの選択肢が多い点に大きな魅力を感じました。

社内には青山学院大学出身の先輩や同僚も多く、周囲を巻き込みながら主体的に積極的に動く姿に触れるたび、青学らしい「他者と協働して問題を発見し、解決する力」が随所に発揮されていると感じます。社会情報学部は1学科ということもあり、先生方との距離が近く、自分が主体的に行動すれば、必ずそれを後押ししてくださる環境がありました。

伏屋ゼミ合宿(前列左端が福泉さん、左から4人目が伏屋先生)

就職して3年を迎える頃、金融工学をもう一度きちんと学び直したいという思いが芽生え、本学の大学院社会情報学研究科で、科目等履修生として2科目だけ履修をしたいと伏屋先生にご相談しました。履修したのは「数理ファイナンス特論」と「確率統計特論」です。社会人としての経験を踏まえて学ぶ金融工学は、学部時代とは異なる深みがあり、実務とのつながりをより鮮明に感じられる貴重な機会でした。働きながらの通学となる私に配慮し、指導時間の調整など、伏屋先生には見えない部分でも多くのお力添えをいただきました。そのご厚意を思い返すたび、今でも感謝の気持ちが尽きません。

アメリカで働いて感じた、失敗を恐れないことの大切さ

当行に入行して驚いたのは、上司の度量が非常に広く、若手であってもしっかりと裁量権をもって仕事を任せてもらえる点でした。私が「海外支店で働きたい」と手を挙げることができたのも、こうした風通しの良い社風があったからこそだと思います。なかでもウォール街は、銀行員としていつか働いてみたいと憧れ続けてきた場所でした。「体力的にも気力的にも挑戦するならできるだけ若いうちに」と、その思いを抱いていたタイミングで機会をいただけたことは、本当に幸運でした。

NY支店の同じグループの仲間と(最前列左から2人目が福泉さん)

ニューヨーク支店では、人種や文化、年齢などバックグラウンドが実に多様な行員が働いています。社会通念がそれぞれ異なるため、自分にとっての「常識」が相手には当てはまらないことも珍しくありません。円滑にコミュニケーションをとるには、まずお互いの文化的背景を理解しようとする姿勢が欠かせないと感じています。また、アメリカではポジティブなメッセージが重視されており、些細なことにも大きなリアクションが返ってきたり、驚くほどオーバーに褒められたりする場面が珍しくありません。最初は戸惑いましたが、前向きな雰囲気の中だと、自然と気持ち良く仕事に取り組めるものです。今では、自分も見習いたい大切な文化だと感じています。

私の仕事は朝が早く、毎日6時前には起床してマーケット情報を収集しながら朝食をとり、7時半には出社します。資金の貸し借りを行うマーケットが最も活発になるのが、だいたい7時から8時半にかけてだからです。午前中は、前日のお客様の動きを把握したうえで、市場の動向を見極めながら、資金の調達や運用管理に集中します。午後は取引のまとめや報告資料の作成、新規案件の企画業務などに取り組み、18時前には業務を終えるのが日課です。

アメリカに来て特に実感しているのは、行動力の大切さです。私にとってほぼ初めての海外生活で、英語もネイティブにように自在に話せるわけではないため、当初は何か行動を起こすにも勇気が必要でした。そんなとき、同僚のベテラン行員から「机に向かって考えているだけでは何も始まらない。とりあえずやってみよう。もし失敗しても、反省して改善すれば次につながるのだから」とアドバイスされたのです。こちらの人々は、良くも悪くも他人の失敗を気にしません。自分で考え、行動したうえでの失敗なら、許容される懐の深さが、ニューヨークという街にはあります。そんな環境の中で、私自身も挑戦に対する姿勢が大きく変わったと感じています。

「地の塩、世の光」に通じる信託の精神

信託とは文字通り「信じて託す」ことです。当行の「三菱UFJ信託銀行信託博物館」の展示によると、その起源の一つは、中世イングランドの騎士が愛する家族のために財産を友人に託したことにあると言われています。そこから「財産を自分自身や大切な人(受益者)のために、信頼できる専門家(受託者)に託して運用・管理を任せる法的枠組み」として、信託銀行は発展してきました。また、当行のイメージキャラクターである『ピーターラビット』の作者であるビアトリクス・ポターは、彼女が愛したイギリスの湖水地方の自然景観を守り、後世の人々に遺すため、絵本の印税で広大な土地を購入し、その大部分を英国のナショナル・トラスト(国民環境基金)に託しました。こうした「誰かのために」という精神は、青山学院のスクール・モットー「地の塩、世の光」に通じるものだと、これまでの仕事を振り返りながら実感しています。

「ブルックリンからマンハッタンを背景に妻と撮った写真です」(福泉さん)

ウォール街は一見すると金銭至上主義の世界に見えるかもしれませんが、実際に働いてみると、長く生き残るための絶対条件は「人として道を外さない姿勢」や「誠実さに基づく信頼関係」だと強く感じます。華やかさよりも、日々の丁寧な仕事と相手への真摯な向き合い方が何よりも大切です。こうした真摯な姿勢を忘れずに、専門家としての知見をさらに深めながら、お客様や社会の役に立てるよう努めていきたいと考えています。

ニューヨークでの暮らしは、絶えず新しい局面が訪れ、そのたびに対応を考え、そこから大きな学びを得られる、刺激と活力にあふれた環境です。これからもチャレンジ精神を忘れず、この街で一歩一歩成長できるよう日々奮闘していくつもりです。

卒業した学部

社会情報学部

現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

VIEW DETAILS

バックナンバー

SEARCH