領域を横断する学びで視野を広げ、イノベーションを起こすプロダクトの開発に挑戦

掲載日 2026/6/17
No.396
<2025年度 学生表彰受賞>
社会情報学部 社会情報学科 4年
西堀 宙知
静岡県立磐田南高等学校出身

OVERTURE

社会情報学部で多角的な視点から自身の興味の軸である情報分野について探究している西堀宙知さん。授業やサークル、個人活動においても、精力的にウェブ開発に取り組み、仲間と挑んだ国際的なアプリケーション開発コンテスト「2025 iCANX INNOVATION AWARD」で「SECOND PRIZE」受賞を果たしました。

情報分野の理論を実践によって体得。社会をとらえる視点も養う

子どもの頃からものづくりが好きでした。機械系エンジニアである父と一緒に、おもちゃを改造したり配線を組み替えたりして遊んだ経験が、私の原点です。中学・高校時代には、センサーやマイコンを使った開発にも挑戦しました。進路を考え始めた当初は理工系学部に進み、情報工学を学ぼうと考えていましたが、調べていく中で「文理融合」の学部があることを知りました。情報技術を社会に取り入れていく過程にも強い関心があったので、情報系の企業が多く集まり、素早い社会の変化に応じて、新しい価値が生まれていく首都圏で、情報分野を軸に学際的に学びたいと考え、青山学院大学の社会情報学部を選択しました。

社会情報学部の情報分野の授業には演習が多く取り入れられていて、インプットとアウトプットを繰り返すことで、知識を自分のものにできたという実感があります。宮治裕先生の「情報科学総合演習A」は、ウェブサービスを企画し、プロトタイプを作成するという非常に実践的な内容で、私はその日に消化したTo DoリストのタスクからAIが日記を生成してくれるアプリケーションを開発しました。手を動かすとすぐにのめり込んでしまう性格なので、授業時間外にも多くの時間を費やして取り組んだことを覚えています。この授業には、週末の二日間で集中的に実装を行う「コーディングキャンプ」もあり、ウェブ開発において必須となる概念を実践の中で身に付けることができたのは、大変有意義でした。また、「情報科学総合演習B」では、3Dプリンターを活用したハードウェアの実装まで経験しました。どちらも、私のようにものづくりが好きな人にはぜひ履修してほしい授業です。

自分の興味に合わせて、これまで触れてこなかったさまざまな領域の知識を得られるのも、社会情報学部ならではの魅力です。特に社会分野の学びは刺激的で、人の行為がどのように社会の仕組みと関係しているのかを深く理解できた「社会学」、Excelでのデータの前処理から計量ソフトを用いた定量的な実証分析の手法までを実践的に学んだ「計量経済学Ⅰ」などの授業を通じて、社会的な視点やデータに基づく合理的な思考が育まれました。こうした学びを情報科学の技術的な知識と融合させることで、本当に社会に求められるプロダクトの創出ができるのだと感じています。

ゼミや課外活動で「同士」に出会い、ものづくりに邁進

1年次の必修科目だった「社会情報体験演習」は、「社会」「情報」「人間」の3分野の概要を学ぶ授業で、私はプログラミングのパートに人一倍熱量高く取り組み、授業内の表彰で1位として表彰いただきました。その様子を見ていたTA(ティーチング・アシスタント)の先輩方が口々に「宮治ゼミナール(ゼミ)に行ったら絶対楽しく研究できるよ」とおっしゃっていたことから宮治先生の元で学ぶことを意識し始め、3年次には迷わず宮治ゼミを選択しました。宮治ゼミでは、ウェブやセンサーなど幅広い技術を用いて社会課題を解決するためのシステムやサービスの開発を行っており、自分の関心にぴったり合っていました。

このゼミには、作りたいもののイメージを持ち、それを形にしようと実際にアクションを起こせる学生が集まっているという印象があります。大学でものづくりが好きな仲間を見つけたいと思っていた私にとって、ゼミで「同士」に出会えたことはとても嬉しいことでした。

3年次は輪読が中心ですが、各々自分で作ったアプリやハードウェアの発表も行います。4年次には卒業研究に取り組むことになり、私は「図書館の本をARで探すシステム(図書館AR司書)」をテーマにする予定です。このアイデアは、研究テーマに迷い、ヒントを求めて図書館内を歩き回っていた時に思いつきました。従来の蔵書検索システムは書誌情報の特定には優れている一方で、実際の配架場所への誘導には限界があると感じていたため、「詳しい経路を案内してくれるシステムがあれば便利なのではないか」とひらめいたのです。私は日頃から、街を歩いたり人と話したりする中で開発物のアイデアが湧くことが多く、机に向かっているだけでは見えないものがあると考えています。システムの見た目や使いやすさといったユーザー心理に加え、実際に導入するうえでの経済的な合理性など、多角的な視点から考察することを大切にしながら、社会情報学部らしい研究として進めていくつもりです。

課外活動では、プログラミング・ゲーム開発・デジタルアートなどを横断してプロダクトの開発に取り組む「Digitart テクノロジー愛好会」に所属し、ここでもものづくりをともに楽しむ仲間との出会いに恵まれました。2024年度には代表を務め、それまで個人制作が中心だった活動に、サークル内ハッカソンやプログラミング言語「JavaScript」の講座を取り入れました。ハッカソンを開催したのは、「せっかく同じ空間に集まっているのに、みんなで何かしないのはもったいない!」という気持ちからでした。チームで制作すれば最終的により大きなインパクトがあるものを生み出すことができますし、アイデアや方向性をすり合わせながら連携して一つのものを作っていくプロセスには、一人で自由に好きなものを作るのとはまた違う楽しさがあります。こうした取り組みにより自然と会話が増え、メンバー間の交流も活発化するなど、サークル全体に良い影響が生まれました。その結果、部員も大幅に増やすことができました。

情報メディアセンターで学生スタッフのアルバイトを続けている。システム班でともに働いている後輩と(左が西堀さん)

チームでチャレンジした国際コンテストは「SECOND PRIZE」という結果に

これまでサークルやゼミ、学部の仲間とともに学内外の多数のハッカソンに参加し、チーム開発の経験を積んできました。その延長として、2025年10月に香港で開催された国際コンテスト「2025 iCANX INNOVATION AWARD」に、理工学部の友人3人と結成したチーム「Blue Train」で挑戦し、「SECOND PRIZE」を受賞することができました。

「Blue Train」は、理工学部棟で大会のポスターを見つけた成瀬佳織さん(理工学部 電気電子工学科4年)が発起人となり、成瀬さんが島津友希さん(理工学部 電気電子工学科4年)を、島津さんが押田優希さん(理工学部 情報テクノロジー学科4年)を、そして押田さんが私を誘う形で結成しました。島津さんと押田さんは先述の愛好会でのつながりがあり、学部は異なりますが、ものづくりが大好きという共通点でつながったチームです。

Blue Trainメンバーで2025年度学生表彰授与式にて記念撮影。左から押田優希さん、成瀬佳織さん、西堀さん、島津友希さん

このコンテストは、MEMSセンサー*を使用した実用的なアプリのアイデアとプロトタイプで競うもので、私たちは自分が電車の何号車に乗っているのかを判定できるシステム「Railocation」を開発しました。着目したのは、特に大きな駅では、電車を降りた地点からどの方向に進めば目的地にたどり着けるのか分からなくなることがあるという問題です。到着駅のホームとの位置関係を把握できれば、進むべき方向を判断しやすくなりますし、さらに目的地までの最短ルートの詳細なナビゲーションや、号車ごとの混雑状況の確認なども、このシステムを活用することで可能になると考えました。

私が担当したのは、ソフトウェアの無線通信技術の考案・実装と、自宅にある3Dプリンターを用いたハードウェアの製作です。無線通信は手掛けたことがなかったため、データの送信方法や、送信データ量の合理化など課題も多くありましたが、チームの力が大きなサポートになりました。

コンテストの趣旨として、「いかに社会にイノベーションを起こすか」が重視されていたため、社会に対する問題意識や経済合理性について、メンバー同士で議論する時間も多くありました。これはまさに社会情報学部の理念と一致する部分でもあり、さまざまな観点から思考を深めることで、これから作ろうとしているものの解像度が高まっていくことを実感できた、一つの実習の場だったと感じています。時に意見がぶつかることもありましたが、十分に議論を重ねたからこそ、最終的にチームとして納得できる結論に至ることができました。目指すゴールに向けて、「人対人」ではなく「課題対チーム」の話し合いをしているのだという認識を共有できていたのが、良い結果につながったのだと思います。

2025年4月の国内予選では、私たちが提示する鉄道に関する課題は日本、特に首都圏に限られるのではないかと、審査員の方から指摘を受けました。そのため、大会の舞台が国内から世界へと変わるにあたり、どのようにして世界の人たちに共感してもらうかを重点的に考えました。そこで着目したのが、開催地である香港の地下鉄です。構造が複雑で、多数の路線が乗り入れている駅もあるため、発表では駅の3Dモデルを見せるなどして、私たちの作品が国際的にも有用であることをアピールしました。各国の発表のクオリティが非常に高く、受賞できるとは思っていなかったので、SECOND PRIZEという結果にはメンバー全員がかなり驚きました。検討を重ねてプレゼンテーションを工夫し、広く役立つ技術であることを世界中の人にイメージしてもらうことができた結果だと思います。

*加速度、気圧、温湿度などを検知する小型センサー

「2025 iCANX INNOVATION AWARD」発表後にロビーにて

「学びの種」の蓄積が、AI時代を生き抜く武器になる

iCANX INNOVATION AWARDを通じての一番の収穫は、「世界を見据えてものづくりをしていきたい」という意識です。大会後に各国の代表と交流した際には、ものづくりでイノベーションを起こそうとチャレンジを楽しむ者同士で、互いを称え合って充実した時間を過ごすことができました。文化や母語が違っても、同じ気持ちを共有しながら一つになって進むことができると分かりました。同時に、共通言語としての英語の重要性も痛感しています。この貴重な経験を誇りに、「これは世界に受け入れられるか」という視点を持って、ものづくりに取り組んでいきたいと思っています。

卒業後は、インターネット広告、ソーシャルゲーム、メディアなど幅広い領域で事業を展開しているインターネットサービス企業に、ウェブフロントエンドエンジニアとして入社する予定です。ウェブフロントエンドエンジニアを志したのは、1年次に動画編集の仕事をしたことが一つの大きなきっかけです。自分の手を動かして作ったものを見て喜んでいただけたことが嬉しく、ユーザーが直接目で見て触れてもらえる部分に自分の主軸を置きたいと考えるようになりました。就職先はエンターテインメントやソーシャルコンテンツも手掛ける会社なので、人の心を温かくし、人と人をつなぐコンテンツを創り出せるエンジニアを目指したいです。

将来のキャリアを考える上では、「ソフトウェア工学」や「情報産業論」の授業で、IT系企業などで活躍されている方から業界や仕事について直接お話を伺えたことも大変有益でした。大学での学びが実社会につながっていることを、ダイレクトに実感することもできました。

エンジニアはAIの影響を強く受ける立場ですが、人の心を動かす感性や、異なる分野をつなげて新たな価値を生み出す思考、状況に応じて柔軟に方向転換する瞬発力などは、人間が担うものとしてますます重要になってくると考えています。多彩な学びの入り口が用意されている社会情報学部の環境を最大限に生かし、深掘りすれば芽が伸びる「学びの種」を広く集めておくことは、これからの時代を生き抜くための武器になると思っています。皆さんにも、ぜひさまざまな学問に広く触れてみることをおすすめします。そして、同じ興味関心を持った仲間を探して、目標に向かって一緒に取り組む経験をしてほしいと思います。

「2025 iCANX INNOVATION AWARD」表彰式にてSECOND PRIZEの表彰状を手に

Blue Trainメンバーからの
Message

理工学部 情報テクノロジー学科 4年
押田 優希

今回、国際大会という舞台でSECOND PRIZEという評価をいただき、大変嬉しく思います。開発にあたっては試行錯誤を重ね、何度も作り直しを行いましたが、チーム内で役割を分担し、最後まで協力して取り組むことができました。また、英語でのプレゼンテーションや海外の参加者との交流を通じて、多くの刺激と学びを得られたことも貴重な経験となりました。審査での質疑応答では鋭い指摘も多く、自分たちの課題や改善点を実感しましたが、それによって研究をより深く見直す良い機会となりました。今回の経験を生かし、今後はさらに実用性や社会貢献性の高い研究・開発に挑戦していきたいです。

理工学部 電気電子工学科 4年
成瀬 佳織

国内外を通じて高い評価をいただけたことを大変嬉しく思うと同時に、世界レベルの発表や技術に触れ、多くの刺激を受けました。私はセンサーの回路設計・作成といったハードウェア面から、データ取得プログラムの実装などを担当し、チームを支えました。大会を通して、技術力だけでなく、研究内容を分かりやすく伝えるプレゼンテーション力や、国際的な視点で説明する力の重要性を強く実感しました。また、各国の社会課題や文化的背景が反映された発表に触れ、ものづくりに対する視野も大きく広がりました。今後はこの経験を生かし、より実用性や社会的意義の高いものづくりに挑戦しながら、国際的な場でも通用する技術者を目指していきたいです。

理工学部 電気電子工学科 4年
島津 友希

自分たちが構想し、仲間とともに形にしてきた列車内自己位置推定システム「Railocation」が、国内外で高い評価を得られたことは、大きな喜びでした。私は技術担当として、システムの構想、実験用列車模型の作成、通信方式や推定アルゴリズムの改良、アプリ開発に取り組みました。この成果は、私一人の力だけで実現できたものではありません。仲間とともに数々の困難を乗り越え、それぞれの知識や得意分野を生かしながら試行錯誤を重ねた結晶だと感じています。私は、技術には人々の生活をより豊かで便利なものにする力があると信じています。今回の経験をさらに発展させ、皆さまの生活を支える一端を担えるよう努めていきたいと考えています。

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。

社会情報学部

現実の社会には文系・理系の境界はなく、高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても“文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人一人の可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。

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