朗読で培った「伝える力」を磨き、「模範解答」から脱却する新しい自分へ

掲載日 2026/5/25
No.393
〈2025年度 学友会表彰(青山連合会表彰)個人最優秀賞受賞〉
文学部 日本文学科 2年
福島 百香
福岡・私立筑紫女学園高等学校出身

OVERTURE

高校に続き、1年次ながらNHK全国大学放送コンテスト朗読部門で優勝を果たした福島百香さん。成果の裏には、「模範解答」を手放し、より伝わる表現を模索する努力があります。日本文学科の学びを表現力向上にも生かす福島さんの、多彩な活動や今後の展望に迫ります。

朗読で磨いた読解力を、日本文学科でさらに深めたい

中学校から放送部での活動を始め、初めての朗読でセリフ表現を褒めてもらえたことをきっかけに朗読に力を入れてきました。高校でも放送部での活動を続け、高校3年生の時には「第71回NHK杯全国高校放送コンテスト」朗読部門で優勝することができました。

朗読のために作品を読み込む経験を重ねるうち、日本文学を学んで読解や分析をさらに深めたいという思いが高まりました。青山学院大学を選んだのは、2年次からゼミナール(ゼミ)が始まり、友人や先生と作品について独自の解釈など、意見交換をする機会に多く恵まれると考えたためです。東京の中心で最新の文化や情報に触れられる環境が、アナウンサーやナレーターといった声の仕事への夢に近づけると考えたことも理由の一つでした。

入学後は、文学だけでなく日本語そのものにも強い興味を持つようになりました。「日本語学概論Ⅰ」では、留学生も一緒に「音声・音韻」「文字・表記」「語彙」の観点から、日本語の特徴を学びました。発音時の舌の動きなど発音のメカニズムを客観的に学んだことは、アナウンスや朗読での明瞭な発音に直結しています。例えば、「下さい」と「ください」のように漢字とひらがな、言葉の選び方など、細かい表現についても考察し、相手に伝える上で言葉にこだわる大切さも実感しました。

この1年間の学びを通して気付いたのは、私には「多くの人が納得するような模範解答」や「王道で定番の答え」を導き出そうする傾向があることです。今後、研究や学びを深めるにあたり、先生方や先輩のお話から、研究とは自分なりの視点を持って初めて成立するものだとも知り、模範解答探しから脱却することが課題だと感じました。先生方からは「違和感を大切にして」「納得いかないところにこそ焦点をあてて」といったご指導を受け、少しずつ、正しさを求めるだけでなく自分なりの視点を生かす意識が育ってきたと感じています。

高校時代には、コンテストでの優勝をきっかけに、春の選抜高校野球大会開会式での司会も務めた

アナウンス研究会では、苦手分野にもチャレンジ

現在は青山学院大学アナウンス研究会(AAS)に所属し、声で表現し伝える活動を続けています。AASでは、ニュース原稿の読みやフリートークを行う基本練習に加え、MC・DJ・ラジオドラマ・実況の4セクションに分かれての作品発表、コミュニティFMでのラジオパーソナリティ、学内外のイベントでの司会など幅広い活動に取り組んでいます。

部員にはアナウンサー志望だけでなく、プレゼンテーションや面接の表現力向上を目指す未経験者、映像制作や脚本執筆が得意な人など、多様なメンバーが集まっています。独創的なプレゼンテーション、ストーリーづくりなど、さまざまな個性の表出に日々、刺激を受けています。

私はラジオドラマセクションに所属しています。朗読でセリフの表現を強みとする私ですが、朗読では人物を客観的に捉えながら読むのに対し、ラジオドラマでは役に「なりきる」ことが必要です。模範解答を求めがちな私にとっては実は苦手な分野ですが、あえて苦手分野に挑戦し、新しい自分を見出したいと考えています。先輩からは「きれいに音が流れるように読まなくていいよ。もっと感情を前面に出してみたら?」など助言をいただきます。これまでの「正しくきれいなスタイル」を打ち破るのを自分でも楽しみにしています。

FM HOT 839(相模原市・町田市・愛川町のコミュニティラジオ)で毎週月・水曜日に「大学生の今をお届けする」をコンセプトとする番組を交代で担当しています。ラジオ局の方から直接指導を受けられるのですが、ここでも「流暢にそつなくこなすことはできているけれど、それだけでは一方的に聞こえてしまい、リスナーを引き込むには少し物足りない」というアドバイスをいただきました。難しい課題ですが、リスナーとの距離を縮めて、魅力ある語りかけができるよう努力を続けています。

「高校でも優勝、大学でも優勝」を達成した大学放送コンテスト

1年間のAASの活動の中で、特に印象に残っているのが、第42回NHK全国大学放送コンテストの朗読部門での優勝と箱根駅伝優勝報告会での司会です。

コンテストでは4つの課題作品の中から1作品を選んで抜粋し、約2分の朗読を行います。私は、夏川草介著『スピノザの診察室』を選び、緊迫感のある手術室の場面を読みました。登場人物の人柄を表現し「間」を効果的に入れ込める場面で強みを発揮したいと考えたからです。

朗読の魅力は、文字だけでは得られない情景を届けられるところにあると考えています。そこで私は、読み手と聴衆との間に映像を投影するつもりで読むことを心がけており、準備する際にも映像を想像するところから始めます。手術の機材を手に取る速度やその日の天候なども具体的に想像し、登場人物の造形では、本の中で明らかにされていない経歴や性格も補い、その人の履歴書を書けるくらいまでに掘り下げます。

「高校でも優勝、大学でも優勝」という目標は、プレッシャーでもありましたが、作品の魅力を伝えることを第一に考え取り組みました。優勝が決まった直後はまずは安堵の気持ちがやってきて、やがて「青山学院大学アナウンス研究会」として全国の舞台で評価された喜びと、先輩や仲間への感謝の気持ちが込み上げてきました。

第42回NHK全国大学放送コンテスト優勝の記念写真。観客に場面の情景を生き生きと伝えることを心がけた

箱根駅伝優勝報告会の司会では、選手一人一人の活躍ぶりや走りの特徴、経歴、そして駅伝の歴史も含めて、細かく調べ念入りに準備をして臨みました。イベントでの司会は、決まったことを読めば良いものと思われるかもしれません。しかし、出演者のお名前を紹介するだけでも、その人について知識があるかどうかで聴衆への伝わり方がまったく変わってきます。レース当日の選手の走りや背景を思い浮かべながらの司会で、3連覇という快挙の祝福ムードを少しでも盛り上げたいという思いで務めました。

来場者の多さに圧倒されながらも、堂々と司会を務めた箱根駅伝優勝報告会

もう一つの夢「教育」と、「伝える」大切さ

中学・高校時代と比べて、伝える意識が強くなった点は成長できたところだと感じます。以前は「良い声で読めた」と満足してしまい、相手にどのように届いたのかまで考えていませんでした。

「『皆さん』と呼びかける時も、『あなた一人』に伝える意識が大切と」というアドバイスは特に印象に残っています。以来、「原稿を読む」よりも特定の誰かに「伝える」ことを意識するようになりました。

声の仕事と同じく、国語科の教員や放送部の顧問など「教える仕事」にも関心を持ち教職課程も履修しています。教育の実践にも挑戦したく、シビックエンゲージメントセンターが実施しているプログラムで、渋谷区の小学校で児童の学習をサポートしたり遊んだりするボランティア活動に参加しました。ICT学習の中心となる教育現場において、子どもたちへの指導や関わり方が難しくなっているという課題に触れ、視野が広がりました。

AASの活動として2年次からは、青山学院中等部の放送部での指導にも携わります。先輩が教える様子を見学しましたが、アナウンスの技術を教えるだけでなく、興味や意欲を引き出す関わりが重要だと感じ、モチベーションを高める教え方にも関心を抱いているところです。

日頃の授業では、街で見かける標識など身近な事例を出して日本語表現を考える、妖怪やお化けを切り口に古典作品を学ぶなど、どの先生も学生が興味を持てるよう配慮してくださることに、いつも感心しています。伝え方を工夫をしたり後輩の指導をしたりするにあたっては、こうした先生方の教育手法も参考にしたいと考えています。

個人としても朗読活動を行なっている。福岡で開催された朗読イベント「朗読の扉 vol.1」にて

柔軟に考え、幅広く挑戦して新しい自分を目指す

2年次からは、近代文学を扱うゼミで学ぶことを希望しています。朗読を続ける中で、夏目漱石、芥川龍之介、宮沢賢治などの作品に触れることが多く、この時代の文学に最も親しみを感じているからです。時代背景や作者の思想まで視野を広げ、幅広い知識を得てより深く読解する力を付けたいと思っています。

以前、レポートで「朗読するならば、このように緩急をつけて読む文章だと思う」と書いたところ、先生から「興味深い」とご評価いただきました。朗読の視点から作品を考えることも、自分らしい研究の切り口になるのではないかと考えています。

声で伝える仕事や教える仕事を目指す中では、日常生活も「相手により伝わる伝え方」の実践の場としています。デパートでの袋詰めや販売のアルバイトをした時には、フリートークの練習の場として、ただ品物を詰めるだけではなく、商品の情報やお客様の装いについてなど、何か一言を添えてお客様に楽しんでいただく工夫をしていました。検定試験の受付では、受験者にかける言葉を工夫することで、不安を和らげ、手続きを円滑にできるという発見がありました。どんな仕事もこだわりポイントはたくさんあり、工夫を模索するのは楽しいものです。

こうした幅広い活動を通じて「王道・模範解答に寄りがち」な自分を超えていくことが目標です。そのために必要なのは柔軟性だと考えています。「こんなことを言ったら変かも」「受け入れられないかも」と思うことも臆せずに表明し、時にはやり過ぎる失敗もしつつ、ありきたりではないことに、どんどんチャレンジしていきたいと考えています。多様な学生に囲まれる青山学院大学は、そんな挑戦を通して新しい自分をつくっていくのに、最適な環境だと確信しています。

「第42回NHK全国大学放送コンテスト」朗読部門優勝の成績により、「2025年度 学友会表彰」青山連合会表彰最優秀賞(個人)を受賞した

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。

文学部 日本文学科

青山学院大学の文学部は、歴史・思想・言葉を基盤とし、国際性豊かな5学科の専門性に立脚した学びを通じて、人間が生み出してきた多種多様な知の営みにふれ、理解を深めることで、幅広い見識と知恵を育みます。この「人文知」体験によって教養、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を拓く「軸」を形成します。
日本文学科では、文学と語学、日本語教育という多彩な研究対象を擁し、実践的なカリキュラムを揃えています。日本文学科における学びの本質は、過去から現在に至る日本語で書かれたテクストを対象とすることで、テクストの向こう側にいる〈他者〉と対話する技術を学ぶところにあります。〈他者〉の目を通して今一度自分自身という存在について見つめ直し、国際社会に通用する深い洞察力を養います。

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