細かな分析と改善の積み重ねが成長のカギ。経営学で得た思考法をレスリングにも生かす

掲載日 2026/7/7
No.398
<2025年度 学友会表彰(体育会表彰)最優秀選手受賞>
経営学部 経営学科 4年
菊田 創
埼玉・私立埼玉栄高等学校出身

OVERTURE

年代別の全国大会で優勝するなど、レスリングのグレコローマンスタイルで活躍する菊田創さん。自分のレスリングを詳細に分析することで課題を克服し、レベルアップを図ってきました。青山学院大学レスリング部の魅力や監督の教え、学部での学びと競技のつながりについて伺います。

監督と出会い、青学でレスリングを続けることを決意

幼い頃は体が弱く、体力をつけるために、2人の姉が習っていた柔道を3歳頃に始めました。その後、柔道の寝技強化を目的に、レスリングを習い始めた姉の影響で小学2年生のときにレスリングに取り組むようになりました。元々運動神経が良く、柔道をしていたおかげで体幹も強かったため、試合に出たら勝てる、勝てると楽しいし褒めてもらえる、その好循環を経験したことをきっかけにレスリングに夢中になりました。学校の授業が終わったらすぐに練習場に向かう日々で、自分にとっては練習が遊び場のような感覚だったと思います。幼い頃は体が弱くて、よく病院で診察を受け、小児科の先生に治療していただいたことも多く、担当医が自分にとってのヒーローであり憧れの存在でした。そのため、「医者」になるという夢もあり、練習場までの移動中にしっかり勉強もしていました。中学まではレスリングと柔道を並行して続け、高校進学のタイミングでレスリングに専念することを決めました。

レスリングにはグレコローマンスタイルとフリースタイルがあり、私は高校時代にグレコローマンを専門とするようになりました。全身を使っての攻防が可能なフリースタイルに対し、グレコローマンは腰から下への攻撃が禁止されています。大きな制約がある中で、自分の独自性や想像力を発揮して駆け引きしていく面白さに魅了されたのです。

レスリングに打ち込みながらも、医者を志す気持ちも残っていたため、大学でレスリングを続けることは、幼少の頃から決めていたわけではありません。高校3年生のはじめに出場したJOCジュニアオリンピックカップU20の試合会場で、青山学院大学レスリング部の長谷川恒平監督に声を掛けていただき、その後青学のレスリングの練習に参加したのが転機になりました。長谷川監督は元グレコローマンスタイル55kg級の選手で、2012年のロンドンオリンピック出場経験もお持ちです。私はそのことを知らず、初めて監督と実戦練習をした際には、こんなに強い人がいることに衝撃を受けました。年代別の大会では長い間良い結果を残していたため少し慢心がありましたが、自分よりも体格が華奢な監督を相手に何もできず、自分の未熟さを痛感しました。それと同時に、レスリングは自分が考えていた以上に奥深いものではないかと感じました。その後も継続的にレスリング部の練習に参加する中で、部の雰囲気や環境の良さも実感でき、長谷川監督のもとで競技力を高めたいという気持ちが強くなり、青学に進学しました。

長谷川監督とのスパーリングで技を磨いている

優先順位の設定と周囲との協力で、学業と部活を両立

レスリング部の部員は現在10人です。一般的には少人数での活動は練習相手が限られ不利と思われがちですが、むしろ私はそれをメリットと捉えていて、部の魅力になっていると思っています。長谷川監督や松田健悟コーチと実戦形式のスパーリングを行う機会が多いのは大きな強みですし、必然的に異なる階級の選手と組むことによって、技術の幅が広がります。同じ相手と繰り返し練習する中で技の工夫を試み、即時フィードバックをもらいながらその有効性を確認することも可能です。

青山キャンパスのレスリング場で長谷川監督(右)、松田コーチ(左)と

部活動では自主性が重んじられているのも特徴で、長谷川監督から練習内容の指示はほとんどありません。自由にやりたいことができる分、「いま何をすべきか」を自分で考えることが必要とされるため、皆練習に対する意識が高く、オンオフをしっかり切り替えて活動しています。

練習は週6日。基本は18時から青山キャンパスのレスリング場で2時間ほど、土曜日には出稽古を行っています。3年次の途中からはキャプテンを務めていて、チーム運営や練習内容の決定なども担っているため、時間とエネルギーをうまく配分して学業と部活を両立することに苦労しました。片道2時間かけて自宅通学していることもあり、優先順位を明確にし、集中して学習するようにしています。また、何か決める時に独りよがりにならないよう、部員間で密にコミュニケーションを取りながら、同期である副キャプテンと役割を分担して運営にあたるようにしました。限られた時間の中で成果を出すためには、一人ですべてを抱え込まず、周囲の人と協力することが重要だと思っています。

敗因を細分化して考えることが強さになる

試合や練習においては、結果に至るまでの過程を振り返り、「なぜその技を選んだのか」「その選択がどんな結果につながったか」など、自分の判断や行動を細分化して考えることを長谷川監督から常に求められてきました。そうした分析をすることで、課題に直面した際もどこに問題があるかが明確になり、改善につなげやすくなります。私は小さい頃から柔道をやっていたこともあり、長年投げ技を得意としてきました。ところが、対戦相手に投げ技を回避するための対策をされるようになってしまい、思うように技が決まらないという壁にぶつかったことがあります。その時も、うまくいかない原因を細かく検証し、投げにつなげるための布石として組手の強化や胴タックルの習得に取り組んだ結果、試合展開のパターンが広がり、勝率をあげることができました。

経営学を通じてスポーツを下支えする力を養い、理論を競技にも応用

大好きなレスリングを続けている中で、技術力を磨き強くなりたいという思いとともに、レスリング競技の認知度を上げ、その魅力を多くの人に知ってもらいたいと実感していました。そこで、レスリングをはじめスポーツ全体を活性化させ、より発展させるためには組織を支える仕組みや発信のあり方が重要だと考え、客観的にスポーツを組織運営やビジネスの観点から捉え、持続的に支える力を養いたいと思い、経営学部経営学科を選びました。

印象に残っている授業は、宮崎純一先生の「Jリーグのクラブ経営 ~支えるスポーツ~」です。実際にJリーグクラブの運営に携わる方を招いた講義を通じて、競技を継続していくためには周囲からの理解や支援が不可欠であると気付き、いかに競技の価値を伝えるかを意識するようになりました。レスリング部においても、レスリングと部の魅力を伝えるべくマネージャーと協力してSNSの発信に取り組んでいますが、まだ注目度は十分とは言えません。さらに発信の工夫を重ねて、部の発展につなげていきたいと考えているところです。「経営史」の授業では、日本マクドナルド株式会社や日産自動車株式会社などの実際の企業の実例をもとに、発展の過程と背景を学びました。社会状況の変化に伴い企業の判断に対する評価が変わっていく点が興味深く、現在起きている事象についてもそこに至る経緯を踏まえて考えることが重要だと感じています。

3年次からは行動経済学を研究する服部圭介先生のゼミナール(ゼミ)を選択し、身近な疑問をテーマに、アプローチの方法によって人の意思決定がどのような影響を受けるのか考察しています。昨年度はビジネスシーンでよく使われるカタカナ語の印象効果について、大学生を対象にアンケート調査を実施し、企業説明でカタカナ語を多用する企業は魅力度が低下するという結果を得ました。このことから、情報発信する際は、受け手にわかりやすい言葉選びをしなければ、期待した効果が得られないと学びました。

限られた資源の中で最適な選択をするという経営学の考え方を、競技での戦術の組み立てに応用するなど、競技者としてレベルアップを目指す上で学部での学びからヒントを得ることもあります。ゼミの企業研究で、マーケティングや経営戦略のフレームワークを用いて課題を分析し、施策を考えた経験は、レスリングを「技術」「判断」「状況」といった要素に分けて分析することにも通じていて、以前は感覚的に判断していたことも、理論や根拠に基づいて言葉で説明できるようになったのは、大学生活を通しての一番の成長だと思っています。

体育会部活動が行っている地域の子どもを対象にしたスポーツ体験イベントにてレスリング部メンバーで記念撮影(前列左から3番目が菊田さん)

大学での学びと経験を、レスリングのために生かしたい

昨年度は「JOCジュニアオリンピックカップ 2025年U23全日本レスリング選手権大会」で優勝し、本学で2025年度学友会表彰(体育会表彰)最優秀選手を受賞することができました。優勝決定戦では、これまで磨いてきた技が自分でも驚くほど思い通りに決まったことが印象的で、積み重ねた練習の成果を感じました。「2025 U23世界選手権大会」の日本代表選考を兼ねた試合でもあったので、世界大会への切符を手にできたことが本当にうれしかったです。

2025年度学友会表彰の表彰式にて

U23世界選手権大会には、新しい経験を積む絶好のチャンスという気持ちで臨みました。日本国内の試合では、「こう動けば、相手はこう反応するだろう」という予想のもと試合展開を作ることができましたが、海外の選手の想定外の動きに対応できない場面があり、都度相手の動きをよく見て、瞬時に最適な戦術を選び出せなければ、世界では勝ちきれないと痛感しました。自分の足りない部分を見つけられたこの経験を、さらなる成長の糧にしていきたいと思います。

進路はまだ決まっておらず、大学院進学と就職の両方を視野に入れていますが、もう少し競技を続けたいと思っています。現在の大きな目標は、年齢の縛りがない明治杯全日本選抜レスリング選手権大会での優勝です。その大会に今年度出場し、グレコローマンスタイル72kg級では、惜しくも準優勝という結果でしたが、さらに、長谷川監督のように、アジアや世界の舞台でも勝てるよう、向上心を持って真摯に練習に取り組んでいくつもりです。そして、将来的にも、大学での学びとレスリング部で培った分析力や言語化力を生かして、レスリングに関わり続けていけたらと思います。

「令和8年度 明治杯全日本選抜レスリング選手権大会」では準優勝だった

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。

経営学部 経営学科

経営学部では「地の塩、世の光」を教育の理念に掲げ、理論を重視する姿勢を基盤としながら、社会に貢献できる力と、正しいことを追求する姿勢を育むことを大切にしています。経営学部は、企業・組織・個人を適切にマネジメントするために必要な経営学の知識を体系的に学ぶ学部です。国内外で活躍する研究者を教員として迎え、高い専門性に基づく教育環境のもと、経営管理に関わる幅広い理論を順序立てて身につけられるカリキュラムを提供しています。また、デジタル化が進む現代社会に応えるため、データ分析教育にも力を注ぎ、理論的に考える力と、社会を広く見る視野の両方を身につけた人材の育成をめざしています。
半世紀にわたる歴史を有する経営学科では、企業や組織のマネジメント活動に不可欠な理論を中心に据えつつ、経営・会計・マーケティングの基礎的な学修を踏まえて、多様な専門科目へと学びを広げます。これにより、新しい時代の企業活動を多角的に理解できる深いマネジメント観を育みます。さらに演習科目などを通して主体的に学びを積み重ね、研究成果を整理し社会へ発信する力も養われます。

VIEW DETAILS

バックナンバー

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。

学部選択

分野選択