木山教授からの
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木山 泰嗣

法学研究科ビジネス法務専攻は、主に社会人が多く学ぶ昼夜開講の大学院です。税理士試験では、大学院で執筆した修士論文を国税審議会に提出して要件を満たすことで、5科目のうち2科目が免除される制度があります。この制度を活用して税理士を目指す人が多く在籍しています。
Q.ビジネス法務専攻の概要と特色を教えてください。
ビジネス法務専攻では、各学年約20人の学生が学んでいます。会計事務所や税理士法人で働きながら税理士を目指す人が多く在籍しており、平日は6限、7限、土曜は日中に開講し、仕事と学業を両立できる環境を整えています。
専任教員は3人。学生は修士2年次から各教員のクラスに配属され、修士論文を書き上げます。各教員の受け持ちは6〜8人であり、一人一人に目が行き届く指導体制です。教員間で論文指導の進め方や教育方針を共有し、専攻全体で統一した税法教育を行っています。
学生の6〜7割は法学部以外の出身です。そのため、どんな分野から来た人も実力を付けられるようにプログラムを工夫しています。
例えば、修士1年次前期の必修科目「リサーチ&ライティング/研究方法論ⅠA」は、法学未経験者に特に役立つ授業です。法学には、判例を読み解き、文献を調べ、論ずるための独特の技法があります。専門用語、言葉遣いにも特徴があります。それを1年目の早い段階で身に付けられる科目設計をしており、本専攻ならではの教育プログラムの一つです。
基礎的な学びに加え、実践を通して書く技法を身に付けるのが「税務判例・事例演習Ⅰ・Ⅱ」です。判例について学生一人一人が発表する際に、詳細なレジュメの作成を課しています。実際に書く経験を通して、脚注の書き方、出典の示し方、引用のルールなど、法学論文の基本が習得できるようにしています。修士2年次に進級した時点で全員がこの基本を習得しています。
さらに、本専攻の大きな特色のひとつが「ディベート」です。
過去の判例をテーマに、チームを組んで納税者側と課税庁側の立場に分かれ、互いの主張を展開します。判例の結論にとらわれることなく、チームで話し合って独自の論点や根拠を見つけての主張が可能です。途中で役割を交代するので、双方の立場から主張を組み立てる経験ができます。教員からフィードバックをもらい、議論の進め方や論証の方法を体系的に習得できる仕組みです。
毎年6月には、学部生や修士2年次の学生も含めて、ディベート大会を開催しています。実務家及び研究者による審査も行う大きなイベントとなっています。

Q.学生の指導では、どのようなことを心がけていますか。
税理士試験の科目免除を目指すだけではなく、高い水準の修士論文を執筆する力を付けてもらうことを重視しています。前述の「リサーチ&ライティング」や「税務判例・事例演習」で基礎を学んだ後は、一人一人がクラスで研究の進捗を発表し、私からの指摘や助言も全員で共有します。多様な視点や考え方に触れながら、リサーチ力と思考力を磨いていくのです。
また、法学ではどんな論文にも共通する「基本構造(型)」があります。「どのようなテーマを選び」「全体をどのように構成し」「その中で仮説と自説をどう構築するか」という一連の構造を、折に触れて伝えるようにしています。この構造を理解すると論文執筆が面白くなり、自分で論文を書き進められるようになるのです。
修士論文では、最新の裁判例を素材に法的論点を抽出し、複数の見解を自由に挙げて、どの見解が最も妥当な法解釈といえるのかを論じます。テーマにはできる限り制約は設けません。先行研究が少ないものにも、積極的に挑戦してもらいます。他の人の研究成果をなぞるよりも、自らがそのテーマの先駆者となる方が楽しいでしょう。過去の判例と異なる見解を採用するのも自由です。
もちろん、レベルの高い研究、他の人がやっていない研究の遂行は簡単ではありません。先行研究が少ない場合は、他の税法や税法以外の法令などにも視野を広げて、似た条文や文言を横断的に調べていくことで道が拓けることがあります。そうした幅広い知識の連携は、法律家として長く活動してきた私の得意とするところですから、「こちらが参考になるのでは」という意見は積極的に提示します。しかし、実際に調べ、新しい関連を見つけ出すのは学生本人です。だからこそ、地道な努力を経て修士論文を書き上げた学生は、そのテーマについては高い専門性を備えた第一人者となっています。
2年次の論文指導の科目である「研究指導演習」の木山クラスでは、私自身が実際に書いた論文を題材にして、執筆プロセスを「赤裸々に」伝えてもいます。例えば、テーマ選びに悩んだこと、書くエネルギーを大切にして書けるところから書いたこと、用語の統一や整理は後回しにしたこと等。完成した論文からは見えない「執筆の現場」を教えることで、論文作成を具体的にイメージできるようにしています。
こうした教育の成果もあり、本専攻では、権威ある「租税資料館賞」の受賞者数が全国の税法大学院でもトップレベルです。私のクラスでは2019年度から7年連続で計15人が受賞しています。
Q.税理士を目指す学生が大半ですが、どんな税理士になってほしいと考えていますか。
税法の条文を読み、判例を読み、自ら考え、依頼者のために根拠を持って主張できる税理士になってほしいと考えています。
2年間かけて質の高い論文を書き上げることは「人とは違う研究ができた」という大きな自信につながります。自分で深く調べ、考え、論理的に自説を構築した経験は、将来、課税庁に対して法的根拠を示しながら主張し、依頼者を支える上で、必ず生きるでしょう。ディベート教育に力を入れているのも、根拠を持って意見を伝え、相手を説得する力を養えるからです。
私自身、税務訴訟で納税者側の代理人を務める弁護士として長く実務に携わってきました。その実務家としての経験を踏まえ、資格や修士号の取得のためだけの研究ではなく、将来の仕事につながるような研究ができるように指導しています。
「大学院で法学研究」と聞くと、一人で黙々と論文を書く姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、本専攻は1学年20人程度、社会人としてさまざまな経験を持つ学生が集まり、刺激を受けながら切磋琢磨できる環境です。
さらに、私のクラスでは、昼間の大学院で公法を研究している学生との合同授業も行っています。学部時代から法学を学んできた学生と交流することで、新たな視点を得られることも少なくありません。休憩時間には仕事や研究の悩みを相談し合うなど、社会人大学院ならではの温かい雰囲気もあります。
「仲間と切磋琢磨しながら、誰にも負けない研究をしたい」「自分だけのテーマに挑戦したい」と考える人に、ぜひ入学していただきたいと思います。学部時代の専門は問いません。法学部出身でなくても、専門的な研究に取り組める段階的な教育プログラムを整えていますから、安心して飛び込んできてください。




学生からの
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法学研究科 ビジネス法務専攻 修士課程2年

学部時代には他大学で生物学を専攻し、卒業後は研究開発の仕事に携わっていました。ある時、会社のコスト管理に携わったのを契機に会計分野に興味を持ち、簿記や会計を学び始めました。学んでみるとどんどん楽しくなり、税理士という全く異なる分野へのキャリアチェンジを目指すきっかけとなりました。
現在は税理士法人に勤務し、クライアント企業の会計書類作成などに携わっています。職場では大学院での学びと仕事を両立させながら税理士を目指す人が少なくありません。その影響を受け、社会人大学院への進学を検討するようになりました。
進学先を選ぶ上では、法学のバックグラウンドのない私が、基礎から着実に力を付けられることを最優先に検討しました。青山学院大学のビジネス法務専攻の入試説明会で「修士論文に高い質が求められる」と伺い、ハードな環境だからこそ法律を使いこなす力を養えると考えて受験を決めました。
また、職場の同僚や友人など、複数の知人から「税法といえば木山先生」とお名前が挙がったことも、本専攻に進学を希望した理由の一つです。
法学経験がない不安については、入学前の事前学習会でかなり払拭されました。基礎的な学びを得られたことはもちろん、私のような法学未経験の学生が多くいることを知ることができたことも大きな安心材料でした。
実際に学び始めて苦労したのは「判例を読むこと」それ自体でした。読んでも「誰が何を主張しているのか」把握できない状態だったのです。経験を積むうちに、課税庁、納税者、裁判所、三方からの主張を明確に分けて理解することができるようになりました。すると、考察の糸口が見えて、自分なりの視点が生まれ、意見を考えることが楽しくなってきます。
特に「税務判例・事例演習」で、多くの判例を読み込み意見を述べる実践を積んだ成果は大きいと思います。知識だけでなく、どう考えたらよいのか、その方法を身に付けることにつながりました。
「ディベート」も大きな成長につながった科目です。初めのうちは、相手チームの主張を聞くと「なるほど」と納得してしまい、反論すべき点が見つけられませんでした。しかし、ディベートに向けた準備で、綿密なリサーチや主張の読み込みを重ねるうちに、だんだんと「この角度で考えたときにはおかしいのではないか」と反論するポイントを見出す力が付いてきました。
こうした視点は、現在取り組んでいる修士論文を書く上でもそのまま生かすことができます。論文の作成は「自説に対してどのような反対意見が想定できるか」「自説の帰着は論理的に納得できるか」など、一人でディベートを行うようなものです。ディベートを経験しないままに修士論文に取り掛かったとしたら、筆が進まなかったと思います。
木山先生がご自身の論文執筆の過程まで詳しく話してくださるのも印象的でした。「これほどキャリアを重ねた先生でさえ試行錯誤されているのだ」と知ることで、自分も一歩ずつ進めばいいのだと思えるようになりました。
先生はユーモアがあってお話ししやすく、いつもリラックスして学べる環境をつくってくださり、感謝しています。
修士論文では、不動産売却の消費税裁判例に着目し「合理的に区分されていないとき」という文言の解釈をテーマとして選びました。仕事で不動産売買に関わることが多くあり、興味を持ったテーマです。
先行研究が少なく、参考資料を見つけるのは大変ですが、まだ誰も考えていないことを追究できる面白さを感じています。なるべく視野を幅広く持ち、他の法令も参考にしながら研究の手がかりとなる資料を見つけ出していきたいと思います。その過程で、さまざまな法令や文献に触れ、新たな知識を得られることも楽しみの一つです。
目下の目標は、一人前の税理士として仕事ができるようになることですが、将来的には国際税務に携わりたいと考えています。海外の税制にも興味がありますし、商取引がグローバルに広がる現在でも国際税務に対応できる税理士はまだ少ないと聞き、ぜひ挑戦したいと思っています。
本専攻には、私のように、法学自体に触れたことがない人もいれば、2つ目の修士号取得を目指す方もいます。ふだんの生活では出会えないような多様な年齢や属性の方々と共に、充実した大学院生活を送っている実感があります。
熱心な先生方の指導を受け、仲間と切磋琢磨しながら、自分なりの視点や主張を修士論文として形にする経験は、これから税理士として仕事をしていく上で、大きな財産になると感じています。慌ただしい日常の中で「学問に集中する」という贅沢な時間を過ごせることも魅力です。
税法に関心があって、法学研究科への進学を検討されている方はぜひ本専攻を視野に入れていただければと思います。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。
法学部 法学科

AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度開設の「ヒューマンライツ学科」があります。
法律は、人間社会の生活すべてに直結するともいえるルールです。法律を正しく理解し、公正で客観的な判断を下せる「リーガル・マインド」は社会のあらゆる領域で求められます。AOYAMA LAWの国際性豊かな教育は青山学院大学の歴史とともに歩んできました。
法学科では、国際的・実践的なカリキュラムを通じて、専門的知識と法的正義感を備えた「法の智恵」を養います。










































































































































































































