村田教授からの
Message
村田 和義

本ゼミナール(ゼミ)では、人とコンピュータとの関係を軸に、より良い生活を支える情報技術を研究しています。異なるバックグラウンドを持つ学生が集まる社会情報学部の環境を生かし、学生同士がディスカッションを通じて共に学び成長すること、学生自身が自らの発想で研究テーマを見つけ出すことを重視しています。
Q.ゼミでの研究内容と、現代社会におけるその重要性について教えてください。
私の研究分野は、一般的に「ヒューマンインタフェース」や「ヒューマンコンピュータインタラクション」と呼ばれています。わかりやすく言えば、「人とコンピュータとの関係を軸に、より良い生活を支える情報技術を考える研究」です。私たちの身の回りには、スマートフォンやゲーム機、家電など、コンピュータを活用した製品が数多くあります。操作のしやすさや映像の見え方、そしてこれらを介した誰かとのコミュニケーションによって、行動が変わることを日常的に経験しているのではないでしょうか。当ゼミでは、このようなコンピュータとそれを使う人との関係に着目し、使う人の視点から生活をより豊かで快適にする研究に取り組んでいます。
コンピュータの研究と聞くと、新しい技術や高性能なシステムの開発を思い浮かべる方も多いと思います。しかし、この分野で大切にしているのは、技術そのものよりも、それを使う人の体験です。人々が気付かないうちにデバイスを使いやすくしたり、利用のハードルを下げたりするなど、この分野の研究成果は日常の中に自然と溶け込んでいます。おそらく多くの人は、「これは使いにくい」「操作がわかりづらい」と思う機会は多くても、使いやすいことには気付きにくいのではないでしょうか。私たちの研究は、情報機器を使う際の小さなストレスを解消する、縁の下の力持ちとして社会を支えています。大切なのは、単に便利な技術を生み出すことではなく、技術を使うことで人の行動がどのように変化し、どのような感情が生まれるのかまでを含めて探究することです。
近年は、生成AIとの対話やAIによる人間活動のサポートが広がり、人とコンピュータとの関係は大きく変化しています。コンピュータ技術を高めるだけでなく、人間を理解し、使う人の視点から考えるこの分野は、今後ますます重要になるでしょう。

Q.学生への指導で工夫されていることは何ですか。
教員が一方的に指導するのではなく、学生自身に考えてもらうことを意識しています。3年次にはグループワークを多く取り入れ、他大学の学生と合同でコンテストに参加するなど、学生同士で話し合いながら主体的に学べる環境を整えています。
ゼミがスタートして現在11年目ですが、どの学年もおおむね、3年次前期の終わりから後期には、相互コミュニケーションが進んで和やかな雰囲気になり、共同作業がスムーズになる傾向があります。
研究テーマの決定においても、各自の興味や関心をベースに発想を広げてもらいます。楽しさがなければ、モチベーションを高く保って研究をやり切ることは難しいと思うからです。
学生からは、「好きなフォントを使うと勉強がはかどるか」「初対面での会話を弾ませる仕組みがつくれないか」「ネコミミを付けて会話をするとコミュニケーションが変わるか」「ダンス公演の観客は舞台のどこを見ているか」など、一見コンピュータとは関係ないような、趣味やサークル活動の中で見つけた課題が挙がります。これらについてゼミで学んだ知識を使って研究として昇華させることを目指しています。また、ゼミで読んだ文献に興味を持ち、そこからテーマを見つける学生もいます。
最初はテーマが広すぎたり、アイデアが漠然としていたりする学生がほとんどです。学生と話し合いながら焦点を当てる範囲を絞っていき、より具体的な内容に落とし込んでいきます。テーマ設定で熟慮する過程も研究の楽しみの一つです。存分に悩んでもらいたいと考えています。
かつてゼミに所属していた学生が始めた研究の一つに、「キャラクタへの愛着を利用したスマートフォンの使いすぎを防ぐ仕組み」があります。「ついついスマートフォンを使いすぎてしまうのを防ぎたい」という発想から生まれたもので、「ちあぽん」という擬人化したキャラクタが「使いすぎ」を通知することで、利用者が警告を受け入れやすくするシステムの研究です。この研究はゼミ内で受け継がれており、希望する学生に「どのような働きかけが効果的なのか」「どのような表現が人の心に響くのか」など、この研究をさらに進めてもらっています。
Q.ゼミを通じて、学生たちにはどんな力を身に付けてほしいと考えていますか。
社会・人間・情報の3つの分野を融合的に学ぶ社会情報学部で、経済や経営、人の心理など幅広い領域の知識を身に付けることは、これからの社会において大きな強みになるでしょう。特に、AIの発展によってさまざまなことが自動化されるようになった今、情報技術の知識だけを持っていれば良い時代ではありません。社会で活躍するためには、多様な人々との関わりが欠かせません。ゼミでのさまざまなバックグラウンドを持つ学生同士が意見を交換し、相互に学び合う経験を通して、他者と協働する力を身に付けてほしいと考えています。ゼミ生は単なる友人ではなく、互いに切磋琢磨し良い影響を与え合いながら、就職活動や卒業研究を進める「仲間」になってくれたらと思います。
また、AIを適切な道具として使いこなすスキルも大切です。英語の文献を読むことを勧めていますが、一人で読み通すのは大きな負担がかかります。しかし、AIを使えば英語文献に触れるハードルは格段に下がり、より多くの研究を知ることができます。大切なのは、AIに頼りきるのではなく、目的に応じて適切に活用し、自分で考えるための力として使いこなすことです。
どんなにAIが進化したとしても、人の行動や感じ方を理解して技術を社会に生かすことは、人間だからこそ担える役割です。このゼミで学んだ「使う人の視点」が、社会で活躍するための強みになってほしいと願っています。




学生の
Message
社会情報学部 社会情報学科 4年
東京都立日野台高等学校 出身

高校時代は人間観察が好きで、心理学を学びたいと考えていました。進路指導の先生からの紹介で、心理学に加え、経済などの社会科学やプログラミングなどの情報科目も学べる青山学院大学の社会情報学部を知り、受験を決意しました。もともとゲームが好きでプログラミングや情報分野にも興味はありましたが、「自分は文系だから情報系は関係ない」と思い込んでいたところ、文系・理系という枠組みにとらわれず、自分の興味や志向に合わせて学べる点に大きな魅力を感じました。
1年次には、社会・人間・情報分野について幅広く必修科目で学びました。その中でも特に情報分野に興味を持ち、2年次からは情報領域の授業を中心に履修しました。村田先生の「ヒューマンインタフェース」「情報デザイン」の授業を受講したことで、高校生の頃から興味のあった心理学と情報分野が融合する学びに関心が高まりました。利用者の視点で考える「ヒューマンインタフェース」をより深く学びたいと思い、このゼミを選択しました。
3年次に挑戦したコンテスト「テクノ愛」は特に印象に残っています。「遠隔でのディスカッションやアイデアソンを支援するサービス」というテーマに、他大学の学生も合同で取り組みました。合同チームは、まず村田ゼミ内で事前にグループ1・2・3に班分けを行い、その後、他大学のゼミ生と同じグループ番号同士でチームを編成しました。グループ1は他大学のゼミ生3名と村田ゼミ生2名の計5名、グループ2は他大学のゼミ生2名と村田ゼミ生2名の計4名、グループ3は私を含む村田ゼミ生4名で構成されました。役割分担は特に設けていませんでしたが、私はメンバー全員が納得したうえでアイデアを決定することを意識していました。そのため、発言が少ないメンバーに対しては積極的に「どう思う?」などと声をかけ、意見を引き出すよう努めました。そのうえで、メンバー全員が意見を出しやすい環境づくりを意識しながら、実際に世の中でどのような困りごとがあるのかを洗い出し、出た意見を調整しつつ最終的に一つのアイデアに絞り提案をしました。
さまざまな意見に触れることで、以前は相手の意見をそのまま受け止めるだけでしたが、「なぜそう考えるのだろう」と深掘りする習慣が身に付き、多様なメンバーと議論を重ねながら合意形成を進める力も養えたと思います。
また、ゼミで行うユーザー分析を繰り返して、使う人の立場から「本当に問題になっていること」を捉えることには、難しさと同時にやりがいを感じています。そう感じる背景には、初代の「ちあぽん」が村田先生によって開発され、その後もゼミの先輩方が研究を継続しながら改良を重ねてきた流れがあります。その中で先輩方は、スマートフォンの使い過ぎを警告する機能の開発にも取り組み、ちあぽんが「デジタルデバイスを使いすぎない習慣を形成する」ことを目的として進化してきた経緯を築いてきました。さらに、先輩方の研究では、スマートフォン利用習慣を改善し「使い過ぎない」意欲を維持し続けるためには、従来の1週間前後の短期実験では不十分であり、より長期的な利用実験が必要であることが示されていました。一方で、長期実験ではユーザーがシステムに慣れたり飽きたりすることで効果が薄れる可能性があるため、実験期間中もユーザーの意欲を新鮮に保ち、正確な効果検証や習慣化の促進を実現するためには、メッセージの自動生成や内容の更新といった「飽きない仕組み」を導入する必要があると指摘されていました。
こうした研究の積み重ねを踏まえて、村田先生が「飽きない仕組み」を検討することを研究テーマの一つとして提案されました。そこで私たちのグループは、このテーマに着目し、ユーザーが長期間継続して利用できる仕組みについて研究を進めることにしました。
まず、私たちのグループでは「飽きずに使うアプリとは何か」という点について考えました。その際、LINEやメール、オンラインゲームなどが思いつきました。これらのアプリの共通点を考えた結果、「一人で利用するのではなく、誰か相手がいるからこそ長く利用されるのではないか」という仮説を立てました。この仮説を検証するために、グループ全員で先行研究を調査しました。その結果、競争をすることでモチベーションの維持につながるという研究を見つけ、そこからゲーム性を持たせることで利用者が飽きずに継続して利用できる仕組みを構築できるのではないかと考えるようになりました。
しかし、村田先生からのアドバイスを通じて、この仮説だけでは十分ではないことが分かりました。競争というゲーム性を取り入れた場合、中間層の利用者は上位を目指してモチベーションを維持しやすい一方で、1位になった利用者は達成感から満足してしまう可能性があります。また、最下位付近の利用者は上位との差が大きいことで意欲を失い、継続利用につながらない可能性があることに気付きました。
そこで私たちは、ランキングを表示する際には人数を絞る、友人同士のみでの競争にする、対戦マッチングによる競争にするなど、さまざまな改善策を検討しました。その結果、最終的には実力が近い利用者同士による少人数ランキング形式にするという方向性にたどり着きました。
ユーザーにとって本当に役立つ仕組みを考えるには、問題点も解決策も必ずしも一つには決まらない難しさを実感するとともに、ユーザー分析を重ねて課題を掘り下げることに面白さを感じました。
2026年度学業成績優秀者表彰では優秀賞を受賞
卒業研究では、「高齢者との遠距離でのコミュニケーションを支援する仕組み」をテーマに取り組みます。大学進学後、祖母と会う機会が減ったことをきっかけに、コミュニケーションの選択肢を増やしたいという個人的な問題意識から着想を得ました。研究を通して、情報の知識がない人やデジタル機器に慣れていない人でも使いやすいシステムやアイデアを提案したいと考えています。
卒業後は、金融機関のIT部門で働く予定です。金融機関のシステムは、老若男女さまざまな人が利用するものです。ゼミで、利用者にとって真の問題は何かを追究し、使う人に寄り添って考えた学びを生かし、顧客から信頼を寄せていただける仕事をしたいと考えています。
※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。
社会情報学部 社会情報学科

現実の社会には文系・理系の境界はなく、さまざまな社会的課題を解決するため社会情報学部においても “文理融合”の学びを追究しています。文系の「社会科学」「人間科学」と、理系の「情報科学」の各専門領域をつなぎ、各分野の“知”を“融合知”に高めるカリキュラムを整備。新たな価値を創造し、社会へ飛び立てる力を育みます。
高度情報化社会と呼ばれる現代では、文系・理系の双方に精通していることがアドバンテージとなります。本学科では、文理の垣根をなくした「文理融合」をコンセプトに、社会・情報・人間の複数分野にまたがる学際的な学びを展開。学問領域をつなぐことで生まれる新たな価値観で、一人ひとりの可能性を広げ、実社会における複雑な問題の解決に貢献できる人材を育てます。
