「誰かのために」が私の力になる。学びから課外活動まで全力投球の4年間

掲載日 2026/8/25
No.410
<2024年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
<2025年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
<2026年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
文学部 英米文学科 4年
青山 千夏
神奈川県・私立日本大学高等学校出身

OVERTURE

通訳・翻訳を中心に、文学部英米文学科で幅広い学びを探求している青山千夏さん。高校時代の理系コースを経て、英語を学んだことで分野を横断する知識と視点を獲得しました。「誰かの役に立ちたい」という思いを原動力に、学業やボランティアに積極的に取り組み、学業成績優秀者表彰の最優秀賞を受賞しました。

医療通訳との出会いが原点に

私が通訳・翻訳に対する興味を持ったのは小学校時代のことです。当時は父の仕事の関係のため家族でアメリカで暮らしており、通院の必要があるときは医療通訳の方がサポートしてくださいました。その方が、幼い私が治療に不安を持たないように、分かりやすく温かい言葉で通訳をしてくださったことで「通訳とはただ言葉を訳すだけではなく、相手の立場や状況に寄り添って臨機応変に対応するものなのだ」と大きな魅力を感じたのです。また当時から『メリー・ポピンズ』という映画が好きで、主人公のようにまっすぐでぶれない、かつ楽しさを忘れない人間になりたいという憧れを抱いたことも英語学習の後押しとなりました。

帰国後も楽しみつつも懸命に英語を学び続けた結果、高校時代には着実に英語力を伸ばしました。一方で物理や化学といった理系分野にも関心を持ち、理系コースに在籍していたため、大学受験の際は文理選択で非常に悩みました。理系受験でいくつかの大学に合格していたこともあり、悩み抜いた末、最終的には、自分の強みを生かすことでより可能性が広がるのではないか、その結果をさらに社会に役立てられるのではないかと考え、英語を専攻する道を選びました。

数ある大学の中から青山学院大学の英米文学科を選択したのは、通訳・翻訳教育が充実しており、第一線で活躍する先生方のもとで学べる環境に引かれたからです。受験期から先生方の著書や研究に触れながら学びへの理解を深めました。

通訳・翻訳を通じ他者との向き合い方を学ぶ

入学後は、一つ一つの授業をかみしめるような思いで履修しました。香取芳和先生の「翻訳Ⅱ(3) 」は、翻訳の理論や歴史、社会的役割について学ぶ授業です。私は「なぜその訳を選択すべきか」という問いに対して合理的に説明していくプロセスに特に魅力を感じました。また翻訳理論を通じて、翻訳では読者や目的によって最適となる表現が変化することを知り、小学校時代にアメリカで経験した医療通訳との連続性も感じました。

稲生衣代先生の「コミュニケーション演習Ⅰ・Ⅱ(6)」は2年間継続して所属しており、現在も主軸として通訳を学んでいるゼミナール(ゼミ)です。私の学生生活に大きな影響を与えた授業で、理論と実践の両面から通訳について学びました。学術論文の読解を通じて、通訳の仕組みやグローバル社会における言語仲介の重要性を理解するとともに、英語ニュースやスピーチを教材として同時通訳や音声吹き替え(ボイスオーバー)を実践し、語彙力や表現力、瞬発力、判断力をバランスよく身に付けました。さらに稲生先生の指導を通じて、通訳における背景知識の重要性を実感しました。授業で培った「相手を見かけや先入観で判断しない」「相手の意図を正しく理解する」「意見の違いを尊重する」といった学びは、日常生活やボランティア活動にも生きています。

2026年度学業成績優秀者表彰の表彰式にて

DIAS, Joseph V.先生の「コミュニケーション演習Ⅰ・Ⅱ(2)」は、稲生先生のゼミと並行して、3年次の半年間のみ所属していたゼミで、大変印象的な授業でした。サービス・ラーニングについて学ぶ中で、NPOやNGOの方々から実際の活動に関するお話を伺い、学生自身もボランティアを体験する機会がありました。そこで「世の中には、これほど多くの人が支えを必要としている」と気付きました。この授業を通して、大学で学ぶ価値は知識の習得だけではなく、多様な人々と刺激し合いながら新たな挑戦に踏み出せることにもあると実感しました。

3年次に所属したディアス先生や稲生先生のゼミでボランティアや通訳、異文化コミュニケーションについて学ぶ中で、その学びをもともと活動していた「Youth国際なんでも教室」でより実践的に生かしたいと考えるようになりました。そのため、ゼミのメンバーにも声をかけ、一緒に活動するようになりました。この団体では、日本語を母語としない子どもたちに夏休みの宿題や学習支援を行っています。私自身、アメリカから帰国した当初、文化や環境の違いに戸惑った経験があったことから、同じように悩みを抱える子どもたちの居場所づくりに取り組んでいます。

授業以外にも、3年次にはマルタ共和国のマルタ大学の語学学校で約1か月間の語学研修と文化研修を行い、念願だった海外留学も実現しました。

現在はREIMANN, Andrew Neal先生の「特別演習」で卒業論文を執筆しています。論文のテーマは「日本の英語教育はなにを必要とするのか ― TESOL* および異文化コミュニケーションの視点から―」です。アメリカでの生活経験や、通訳・翻訳の授業、ボランティアで出会った子どもたちとの関わりなどから得た学びを糧に、学習者の可能性を広げる英語教育について探究する日々です。

マルタ留学中、現地で仲良くなった仲間と歴史や文化に触れながら過ごした日々。(写真左側が青山さん)

*TESOL:英語を母国語としない人々への英語教授法。Teaching English to Speakers of Other Languagesの略。一般社団法人日本TESOL協会

多くの方々の支えから得られた最優秀賞

こうして継続してきた学びは学業成績として形にも表れ、2024年度には学業成績優秀者表彰で奨励賞、2025年度には優秀賞、そして2026年度には最優秀賞を受賞しました。この受賞で何よりもうれしかったのは、周囲の方々と共に学び支え合ってきた歩みが評価されたと感じられたことです。これまで履修してきた授業ではグループワークも多く、特にディアス先生の授業では、グループプロジェクトとしてクラスの仲間が「Youth国際なんでも教室」の活動をサポートしてくれました。みんなでアイデアを出し合うことで子どもたちへの接し方に新たな視点が得られただけでなく、授業内容に関しても気付きを得るといった良い循環も生まれました。

これまで挫折しそうになった時、どこかで支えを必要としている人たちを思うことで「今日よりは明日を、明日よりはさらに未来を良くしていこう」と新たな力が湧いてくることを何度も経験してきました。そうした積み重ねが現在につながっているからこそ、今回の受賞に際しては、これまで出会った方々への感謝の思いが尽きません。

受賞自体も大変光栄で嬉しいものですが、今回の受賞を機に、一人でも多くの方に英字新聞編集委員会の活動や大学での学び、ボランティアの取り組みを知っていただき、「自分も何か行動してみよう」「何か相談してみよう」と思っていただけたなら、この賞は私にとってさらに大きな意味を持つものになります。今回の受賞を新たな出発点として、これからも努力を重ねていきたいと思います。

ボランティアや学生新聞など課外活動も充実

授業やゼミ以外にも幅広く豊かな経験を積むことができました。ボランティア団体「Youth国際なんでも教室」では運営リーダーも務めました。海外にルーツを持つ子どもたちが、日本での生活や学習環境に少しずつなじみ、徐々に笑顔になる様子や、「次の開催が待ち遠しい」と言ってくれた言葉は私たちの活動の原動力になっています。

また、ディアス先生のサービス・ラーニングの授業で、研究活動の一環として、2025年12月にイラクの医療支援を行うNPO法人JIM-NETでのボランティア活動に参加しました。業務を手伝いながら、イラクの現状や自分たちにできる支援について学ぶ機会となりました。

学内のニュースを英語で報じる「英字新聞編集委員会*」の活動にも力を入れました。コロナ禍後、まだ軌道に乗っていなかった英字新聞編集委員会で、新入生ながら編集長を務めることになりました。当初は新聞の発行も難しい状態でしたが、編集長として、メンバー同士が尊重し合えるような空気づくりを意識して声掛けを続けたところ、徐々に活動が活性化し、新聞の発行も軌道に乗りました。特に印象に残っていることは、青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック)を取材した「箱根駅伝特集」です。記事を読んだ海外からの留学生からは「日本で箱根駅伝が注目される理由が理解できた」という感想も寄せられました。メンバーと支え合い価値ある情報を多くの人に届けられたことは、大学生活の中でも特に誇りに思う出来事です。

NPO法人JIM-NETの医療支援活動のボランティアに参加し、募金者へのお礼として贈られている、子どもたちが描いた絵をあしらったチョコレート缶について説明を受ける様子。(右から2番目が青山さん)

その他、社会人講座「青山アカデメイア」では、「江戸文化を知ることはこれからの世界で輝くための知恵」という講座を受講しました。都一中先生から浄瑠璃を学び、先生の三味線に合わせて実際に浄瑠璃を「語る」という貴重な経験ができました。浄瑠璃を知ったことで感性が豊かになり、周囲の人に対しても優しさの心を持てるようになったと思います。

ゼミとクラブ活動の両方の要素をもつ青学独自の課外活動であるアドバイザー・グループ(アド・グル)の活動も印象に残っています。私は農学に興味があったので都市型農業をテーマとするグループに参加して野菜を育てたり、理工学部の平田普三先生のグループに参加して、研究室での研究内容について紹介いただくこともできました。青山学院大学ではこのような学際的な交流の場が多く、理系の学びも新たな形で生かせることを実感しました。

*関連記事:AGU NEWS 123号「特集 より有意義な学生生活のために アドバイザー・グループ参加者募集!」

都一中先生から浄瑠璃を学び、語りの稽古を通して作品の世界観や価値観に触れた時間。 (写真右端が青山さん)

出会いを糧に、これからも学び続ける

文理選択で悩んだ末に英米文学科に進学しましたが、理系の専門知識や、数値に基づいて客観的に物事を考える姿勢は、通訳・翻訳の分野でも大いに役立ちました。高校時代に理系の楽しさを教えてくださった当時の担任の化学の先生には、今も感謝しています。また理系と文系の分野を学んだことで、多様な視点から人の役に立てるようになったことは、私にとって大きな財産です。

私が誰かの力になりたいと願うようになったのは、子ども時代からさまざまな出会いがあったからです。転校を繰り返す中で、仲良くなった友人とも離れてしまうことが数多くありました。別れは辛いものでしたが、出会えた人たちを大事にしたいという思いが自然と強くなったのです。家族と離れて暮らすことになったり、不慣れな環境で自信を失いそうになるなど苦しい時期もありましたが、そのたびに多くの方が支えてくださいました。また、仏教系の幼稚園に通い、アメリカの小学校時代では、ユダヤ教の信徒の方々と触れ合い、現在は青山学院大学でキリスト教について学ぶなど多様な宗教や文化に触れる機会がありました。そこで気付いたのは、どんな文化であってもその中心にあるのは「人を思いやり、助け合う心」ではないかということです。この自分なりの発見が、過去に私自身が多くの人に支えられてきた経験とも重なり、今度は自分が誰かを支えていきたいと考えるようになりました。

私一人の力では限りがありますが、さまざまな立場や環境の人たちをサポートすることで、間接的にでも世の中に貢献できるのではないかと考えています。そうした協力の輪が広がれば、少しずつでも社会が良い方向に変わり、やがては平和な世界に近づいていくことにもつながるのではないでしょうか。そのためにも私は今後も学び続け、将来は異文化理解や情報発信を通じて多様な背景を持つ人々が互いに理解し合えるような社会づくりに貢献したいと考えています。

最後に、皆さんにはぜひ「学びと学びをつなげて考えること」の楽しさを感じていただきたいです。私自身も、通訳や翻訳の授業内容がボランティアや英字新聞編集委員会の活動に結び付くことで世界が大きく広がり、大学生活を非常に充実して過ごすことができました。青山学院大学には専門分野を深掘りするだけでなく学際的に学びを広げられる環境があります。ご自身の学びや経験も異分野と結び付けながら学んでみてください。そこから新たな発見が生まれ、次の挑戦へとつながっていくはずです。

相模原キャンパスにて、アドバイザー・グループの活動を共にした仲間との写真。活動に加え、主催の脳科学研究室の平田先生から脳科学について紹介いただき、研究室に所属する学生の皆さんの日頃の学びについても伺った。(前列右から2番目が青山さん)

文学部 英米文学科

青山学院大学の文学部は、言語、文学、思想、歴史、芸術などを学ぶ5つの学科から構成されています。人間が人間自身を問い続ける営みを通して生み出してきた多様な知の世界に触れることで、幅広い教養と確かな批評能力を養います。「人文知」の広大な世界を垣間見ることで、知性、感受性、表現力を磨き、自らの未来を切り拓く「軸」を形成します。
高い水準と幅広い教育内容を誇る「英語の青山」の伝統を体現する英米文学科では、「イギリス文学・文化」「アメリカ文学・文化」「グローバル文学・文化」「英語学」「コミュニケーション」「英語教育学」の6コースが開講されています。3年次のコース選択に向けて1・2年次では専門基礎科目を偏りなく学び、英語力を磨きます。卒業生は語学力と豊富な知識を生かし、多方面で高い評価を受けています。

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