情報メディアセンターでの活動と地域実習を通じて、学際的な視点で⼤学院へ

掲載日 2026/7/31
No.402
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 博士前期課程 1年
コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間科学科 2026年卒業
太田 康平

OVERTURE

2026年3月にコミュニティ人間科学部を卒業後、奈良先端科学技術大学院大学に進学して⾼度道路交通システムに関する研究をしている太田康平さん。地域実習での学びが現在の研究テーマにつながった過程や、4年次に学会の口頭発表で最優秀賞を受賞した研究について、語っていただきました。

入学時には想像もしていなかった理工系の大学院へ進学

現在、奈良先端科学技術大学院大学で、ITS(Intelligent Transport Systems:⾼度道路交通システム)に関する研究を行っています。ITSとは、⼈と道路と⾃動⾞の間で情報の受発信を⾏い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、さまざまな課題を解決するためのシステムのことです。

現在の研究分野を聞くと、学部では工学を専攻していたと思われるかもしれません。しかしもともと教育に興味があり、図書館や博物館、公民館などで行われる「社会教育」という分野を知り、青山学院大学のコミュニティ人間科学部に進学しました。入学時には、まさか自分が理工系の大学院に進学することになるとは思っていませんでした。

そのような私が、現在こうして理工系の研究を進めるようになった背景には、私自身の好奇心に加えて青学での学びがあり、そのおかげで大学4年次には、第26回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会において口頭発表を行い、「RSNPコンテスト2025」最優秀賞(RSi賞)と「SI2025優秀講演賞」を受賞しました。

RSNPコンテストでの表彰式の様子

進路に大きく影響した情報メディアセンターでの活動

高校時代、趣味で動画編集を行っていたことから、コンピューター全般に興味を持つようになりました。独学で学んでいましたが、どうしても知識に偏りが出てしまうため基礎から体系的に学びたいと考えていました。そこで1年次の夏休みから、情報メディアセンターが主催する「ネットワーク講習会」に参加しました。情報メディアセンターは、情報環境に係る施設、設備などの企画・導⼊および管理運⽤に加え、ICTを活⽤した授業の⽀援や情報基礎教育の実施などを⾏います。講習会への参加は、当初はただネットワークについて学習してみたいという軽い興味で参加しました。

ネットワーク講習会の特徴的な点は、知識を身に付けるだけでなく、実際にネットワーク機器を設定しながら実践的なネットワーク構築を経験できることです。自分で手を動かしてこそわかる手応えがあり、さらに学びたいと意欲をかき立てられました。

また、1年次後期から参加した情報メディアセンター学生スタッフとしての活動は、情報工学に関⼼をもったきっかけとなりました。学⽣スタッフは、主に「AIM Commons*」での機器貸出や貸出機器のワークショップ、情報メディアセンターの提供する各種情報システムの利⽤⽀援を⾏います。私は、学⽣スタッフのプロジェクトマネジメントやAIM CommonsのWEBサイト作成を担当しました。サイトに盛り込む機能や作業の進め方を考え、メンバーと協力しながら実装を進めました。

*AIM Commons…ITに特化した学習用の施設およびそれに付帯するサービスの総称であり、各キャンパスに学生の能動的な学びを支援するラーニングコモンズを設置しています。プロジェクター、ホワイトボードなどを備え付けた声を出せる共同学習空間、ノートパソコンや動画制作機材・環境の貸出サービスを提供しており、課題の作成やゼミ発表の準備などに活用されています。

相模原キャンパスには、コミュニティ人間科学部、地球社会共生学部のほか、理工学部や社会情報学部の学生が学んでいます。学生スタッフとしての活動では、スタッフ同⼠が⾃然と教え合う雰囲気があり、コンピューターやプログラミングが得意なスタッフから学ぶ機会に恵まれました。こうした活動を通して情報⼯学への⾯⽩さに気付きました。

さらに、情報メディアセンターの中川幸子先生は、現在の進路を選ぶ上で大きな支えとなりました。中川先生ご自身が文学部をご卒業後、理工系の大学院で情報分野を学ばれ、現在はネットワークを利用したロボットサービスがご専⾨です。進路についても親身に相談に乗ってくださり、研究テーマの設定から論文の添削など、多くのご指導をいただきました。

青学では情報メディアセンター学生スタッフとしても活動

情報ネットワークへの関心と、地域課題解決の視点をつなげる

社会教育に興味のあった私は、3年次の地域実習を、兵庫県姫路市香寺町の日本玩具博物館で行いました。博物館のある香寺町に赴いて驚いたことは、公共交通機関、特にバスの本数が想像以上に少ないことでした。⽇本玩具博物館では、バスの減便により来館者が減少しており、また高齢者の移動手段の確保が大きな課題となっていると伺いました。

東京で育った私は、移動手段に不便を抱える人の存在を意識したことがなく、地域実習を通して初めて、人口減少に伴う公共交通機関サービスの縮小という地域課題に気付きました。

日本玩具博物館での実習で、江戸時代から伝わる「かくれ屏風」を試作

この地域課題と、1年次から情報メディアセンターで学んだ情報ネットワークの知識と関心を結びつけ、注目したのがITSです。ITSは、交通安全の向上やドライバーの運転⽀援、ひいては⾃動運転を通じて地域交通の課題解決が期待される技術です。これらを実現するためには、⾃動⾞や信号機、踏切など、交通に関連するあらゆるものがいつでもネットワークにつながる環境が不可⽋です。そこで、ITSや情報ネットワーク技術によってこの課題を解決できないかと考えるようになり、それらの研究に関⼼を持つようになりました。

日本玩具博物館の館長と学芸員にインタビューを実施

ドライバーのヒヤリハット情報を子ども向けの地図に表示して、
交通安全を目指す

大学4年次に「RSNPコンテスト」最優秀賞(RSi賞)を受賞した「車両データを活用した子ども向け交通安全マップの提案」は、自動車に搭載されている衝突被害軽減ブレーキ(⾃動ブレーキ)が作動したヒヤリハットの位置や、そのときの連続画像をインターネット越しに収集して地図サービスを構築することで、子どもの交通安全課題の向上を目指す研究です。

テーマ設定では、中川先生からの、文系で学んだからこそ持てる視点を生かすことが大切というアドバイスを参考に、コミュニティ人間科学部で学んだバックグラウンドを生かすことを意識しました。

研究では、通学路で保護者や地域住民が見守りに立つ場所の選定に使うことや、交通安全教育など、さまざまな活用方法を想定しました。子ども向けの地図表示では、自分で危険な場所や状況を理解できるよう、小学校低学年でもわかるイラストや簡略化した地図を使う工夫をしました。

この研究が評価されたポイントは、使⽤したソフトウェアや、実際の社会で使われる場面を具体的に想定していたことだと考えています。システムの実装にあたっては、ネットワーク講習会で得た知識や情報メディアセンター学生スタッフとしての開発経験が、大変役立ちました。

大学院での研究の様子

文理や学部の枠にとらわれず、学びを広げるチャレンジを

今振り返ると、青学では、自らの関心に合わせて学びを広げる機会に恵まれていたと思います。コミュニティ人間科学部では、特に地域実習などの授業を通して、実際の地域課題に向き合い、現場での経験を踏まえながらゼミや講義で学びを深めることができました。また他学部の授業履修制度や他大学との単位互換制度が充実しており、学部の専門をはじめ、一定の条件内で多様な専門分野に触れることができました。また、万代記念図書館の落ち着いた環境も印象的で、集中して講義課題や調査に取り組むことができました。

大学からのお知らせなどが配信されるサイト「学生ポータル」には、講習会やイベントなどさまざまな案内が届きます。ネットワーク講習会も情報メディアセンター学生スタッフの活動も、学生ポータルで知って参加したもので、そうした小さなきっかけが現在の進路につながったように思います。

学ぶ領域は、学部の内容に限定する必要はありません。興味を持ったことに積極的に取り組むことで、⽂系・理系という枠を超えて多様な分野に触れることができました。ぜひ小さな関心を大切にしてチャレンジしてみてください。私が何気ない興味を積み重ねて⼤学院への進学を選んだように、思いがけない進路につながっていくと思います。

奈良先端科学技術大学院大学は、充実した研究環境のもと、学部時代の専攻、年齢、国籍などさまざまなバックグラウンドを持つ学生が多く在籍しており、刺激を受けています。今後も、分野を横断して学び考える力や独自の視点を生かし、ITSの研究で地域社会や地域課題の解決に貢献していきたいと思います。

緑豊かな奈良先端科学技術大学院大学で、情報科学棟をバックに

卒業した学部

コミュニティ人間科学部

コミュニティ人間科学部では、日本国内の地域に着目した社会貢献を追究し、地域文化とそこに暮らす人々の理解を深め、より良いコミュニティ創造に寄与する力を培います。幅広い知識の学び、体験し行動するプログラムを通じて、自ら課題を発見・解決し、地域の人々との互助・共助のもとにコミュニティの未来を拓く力を育成します。
日本の地域社会は、高齢化や過疎化などさまざまな課題に直面しています。その解決に力を発揮するには、地域の人々に接し、活動の実際を知り、共感する体験が重要です。コミュニティ人間科学科では、地域の人々や行政についての学びをはじめ、市町村やNPOと連携した体験的実習などを展開。専門的知識や技術をもつ職業人として、地域の活性化や持続的な活動支援ができる人材を育てます。

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