徹底した復習と「なぜ?」を考え抜く姿勢。熱工学研究で最先端のがん治療に貢献する

掲載日 2026/8/21
No.405
<2024年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
<2025年度 学業成績優秀者表彰 奨励賞受賞>
<2026年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
理工学部 機械創造工学科 4年
志自岐 紗矢
神奈川・横浜市立戸塚高等学校出身

OVERTURE

機械やものづくりへの興味から機械創造工学科に入学した志自岐紗矢さん。日頃から、復習を重ねて本質から理解すること、「なぜ」を考え抜くことを大切にしています。熱工学を医療に応用する研究に携わり始めた志自岐さんに、学習習慣や学びの楽しさについて伺いました。

幼い頃からの機械への好奇心を学習意欲につなげ、
機械創造工学科に進学

幼い頃、長崎の祖父母を訪ねる時に乗る飛行機に興味津々でした。「なぜこんなに大きなものが空を飛ぶのだろう」と不思議に思い、飛行中はエンジニアである父を質問攻めにしていたことを覚えています。子どもの頃から父に身の回りの機械や自動車が動く仕組みを教えてもらう機会が多く、機械や技術についてもっと知りたいと思うようになり、理工学部機械創造工学科に入学しました。大学選択では、相模原キャンパスの緑豊かなのびのびとした環境が気に入ったこと、学科のウェブサイトで「ものづくり」に力を入れていると知ったことが決め手となりました。

入学当初は、大学の授業で扱われる数式や理論のレベルが想像以上に高く、授業についていくだけでも精一杯の日々でした。悩んだ末に意識したのは、公式を丸暗記するのではなく、「なぜそのような式や答えが導き出されるのか」を自分で納得いくまで考えることです。学んだ数式は、演習で繰り返し使って頭に定着させることも心がけました。

また、特に難しい理論は、自分にとって身近な現象に置き換えて考えることで理解を深めました。この方法を身に付けるうえでは、学生時代に同じような努力を重ねた父のアドバイスも参考になりました。こうした工夫を重ねながら、難解な理論についても表面的ではなく、本質から深く理解できるようになったと思います。

復習の徹底と、朝6時起床のタイムマネジメント

理論を積み重ねながら学ぶ機械創造工学科では、一つの理解不足が次の学びに影響します。そのため、「分からないことをそのままにしない」ことは、1年次から徹底しています。少しでも疑問があれば先生に質問したり、友人同士で相談しあったりして、取りこぼすことなく理解できるように努力しています。

また、一度理解したと思っても、時間が経つとまた分からなくなることは少なくありません。そのため、難しいと感じた問題は一週間後にもう一度解いてみて、本当に理解できているかを確認するようにしています。考察と復習の繰り返しが、知識の定着に役立っていると感じます。

タイムマネジメントも重視しています。友人には驚かれますが、1時限目の授業が少なくなった2年次以降も、1時限目に大学に来てラウンジなどで自習をしています。朝6時に起床し、7時には家を出発。大学には8時半過ぎに到着し、9時には自主学習を開始するのが習慣です。通学時間も、タブレット端末などを使って学習時間に充てるようにしています。また、1時間ごとにタスクをスケジューリングして計画的に学習に取り組み、課題やレポートは余裕を持って仕上げるのがモットーです。

一方で、学習ばかりでは心身ともに疲れてしまうため、息抜きの時間も大切にしています。母とランニングをしたり、好きなアーティストのライブへ足を運んだりすることで、気分をリフレッシュしています。学習の継続には、ただ時間をかけるのではなく、「この時間までに終わらせて、その後は好きなことをしよう」と目標を決めて学習計画を立てる、メリハリのある生活が大事です。こうした日々の努力や習慣が、学業成績優秀者表彰受賞につながったのだと思います。

さらに、青山スタンダードでの幅広い学びにより、専門科目とは全く異なる視点に触れられたことは新鮮な経験でした。特に、子どものころから韓国の音楽やドラマが好きで選択した韓国語(第二外国語)の授業では、韓国語を母国語とする先生の指導を受けられ、言葉の響きも味わいながら学ぶことができました。学習が進むにつれ韓国語の歌詞を読めるようになり、韓国文化への理解もより深められたと思います。

2026年度学業成績優秀者表彰の表彰式にて

理論通りにいかない「誤差」。その原因を多角的に考察する面白さ

2年次に受講した「材料力学」「熱力学」「流体力学」「機械力学」の4力学の授業は、研究や将来エンジニアの仕事に就いた際にも基本となる内容で、力を入れて取り組みました。特に「熱力学及び演習」では、生活のあらゆる場面に存在する「熱」について、その仕組みを理解していく過程に大きな面白さを感じました。

これらの授業は、座学での理論と演習での実践がセットになっている形式で行われ、新しく学んだ理論を演習で確かめられることで、理解がいっそう深まりました。演習後には、「なぜそうなるのか」を自分で説明できるようになるまで復習して、知識の確実な定着を意識していました。

また、同じく2年次に受講した「機械創造工学演習」は、自転車を分解し、その内部構造や機能を理解するという内容でした。身近なものが「どのような構造をしているのか」「なぜこのような形なのか」など、考察することの面白さを強く実感した授業の一つです。

授業や演習での学びを踏まえて、現象や計測の方法を自ら体験して学ぶ「機械創造工学実験Ⅰ・Ⅱ」では、理論通りにはいかず、多くの誤差が生じることに関心を抱き、その原因を突き詰めて考える意識が育ちました。初めは、なぜ実験データが理論値からずれるのか、どこに着目して考えたらよいのか分からず、とても難しいと感じました。しかし、グループで議論を重ねながら実験経験を積むうちに、多角的な視点から原因を検証できるようになっていきました。

「なぜこのような結果になるのか」を考察することが面白く、実験後も、移動時間中に結果について考え続けていたことを覚えています。このように粘り強く考え抜くことは、論理的に説明する力にも結び付いたと感じています。

機械創造工学演習では自転車を分解して構造を理解した

魅力を感じる分野は数多く、4年次から所属する研究室を選択する際には非常に迷いました。そんな中、3年次に受講した「機械技術と社会」では、機械工学が社会でどのように活用されているのかを実例を通して学びました。そこで、卒業生である透析装置メーカーの方からお話を伺い、工学技術を医療に生かすことへの関心を深めるきっかけとなりました。

また、同時期に受講した麓耕二先生の「エネルギー変換工学」などでは、研究室で取り組まれている研究内容についても紹介してくださいました。私は特に、がん細胞の熱に弱い性質を利用してがん治療を行う「磁気ハイパーサーミア」という技術に強く引かれ、麓先生の熱流体制御研究室への所属を希望しました。

工学技術を医療に生かす最先端の研究。
大学院に進学し、探究を深めていく

現在、熱流体制御研究室で取り組んでいる「磁気ハイパーサーミア」は、磁性ナノ粒子と呼ばれるナノメートルサイズの粒子が、交流の磁場で発熱する性質を利用した、がんの治療法です。体内に注入した磁性ナノ粒子によって、がん細胞に熱を加えて死滅させることを目指しています。実用化されれば、体への負担を極力抑えたがん治療が可能になるため注目されています。

しかし、磁性ナノ粒子は互いに結合して塊となる「凝集」という状態になりやすく、凝集によって発熱効率が低下するため、治療法として社会で活用するためには、それを防ぐ手立ての確立が必要です。私は、凝集を防ぐために用いる界面活性剤に着目し、粒子の大きさを測定するDLS(動的光散乱法)という手法で凝集状態を評価するとともに、発熱実験の結果と対比させることで最適な種類や分量を探る研究に携わっています。

研究室では、材料を混ぜて化学変化を起こし、磁性ナノ粒子を作り出すことから行う

とはいえ、研究は始まったばかりです。まずは関連の論文を読み込みながら、研究に必要な基礎知識を身に付けられるよう努力している段階です。英語で書かれた論文を読むこと自体が初めてのことで、分からない用語も多く、1本の論文を読むのにも多くの時間を要します。思うように理解が進まないこともありますが、先輩方や先生が親切にサポートしてくださるおかげで、日を追うごとに研究への理解が深まっています。

卒業後は大学院に進学し、「磁気ハイパーサーミア」の研究を続けたいと考えています。4年次に凝集を防ぐ界面活性剤についての研究で一定の成果を重ね、大学院博士前期課程では「生体適合性」に着目し、磁性ナノ粒子を安全かつ効果的に体内へ投与するために、どのようなコーティング方法が適しているか明らかにしていく予定です。

さらにその先の将来のことはまだ模索中ですが、研究や学習を通じて身に付けた「なぜ」を考え抜く力を生かして、社会課題の解決に貢献したいと考えています。

研究室で開催したお花見で(最前列左から4番目が麓教授、右から2番目が志自岐さん)

※各科目のリンク先「講義内容詳細」は掲載年度(2026年度)のものです。

理工学部 機械創造工学科

青山学院大学の理工学部は数学、物理、化学といったサイエンスと、テクノロジーの基礎から最先端を学ぶ環境を整備しています。国際レベルの研究に取り組む教員のもと、最新設備を駆使した実験、演習、研究活動の場を提供するとともに、独自の英語教育を全7学科統一で実施。未来志向のカリキュラムにより、一人一人の夢と可能性を大きく広げます。
機械創造工学科が掲げるモットーは、「未来を創造する機械工学」。自動車産業や重工業などに不可欠な広範囲の工学を基盤に、ソフトウェア技術を組み合わせることで、夢のある心豊かなものづくりを志向する独自の工学を推進しています。その根底には「人と社会と自然の共存」という大命題があります。このテーマを実現するための創造力と想像力を養い、21世紀のものづくりを担う人材を育成します。

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