法はいかに事実を取り扱うべきか 日々の授業を楽しい時間に
<2025年度 学業成績優秀者表彰 優秀賞受賞>
<2026年度 学業成績優秀者表彰 最優秀賞受賞>
法学部 法学科 4年

OVERTURE
法学部法学科で学ぶ名小路彩乃さんは、学びも習い事も息抜きもすべてに全力で取り組んでいます。冤罪事件の報道に触れたことをきっかけに志した法律家への道をひた走る一方、幼い頃から続けてきたクラシックバレエでは集大成となる世界的バレエダンサーとの共演に臨みました。
冤罪で失われた20年の重み
中学1年生の時、テレビで偶然見た「NHKスペシャル」で「東住吉事件」を知り、冤罪によって20年もの時間を奪われた青木惠子さんの存在を初めて知りました。20年間を獄中で過ごしたという事実に触れ、私が生まれてから当たり前のように過ごしてきた10数年は、決して当たり前のものではなかったのだと気付かされました。
特に、当時の私の人生よりも長い時間を獄中で過ごした青木さんが、自身の服装について「30代で時が止まっているから、突然、50代の服なんて着られない」と言ったことに強い衝撃を受けました。
冤罪は当たり前に送るはずであった人生を奪う行為であると知りました。失われた人生は元に戻らず、冤罪によって生じた損害や苦痛が消えるわけではありません。それなのに、無罪判決が言い渡され、それによって事件が一件落着したかのように扱われることにも違和感を覚えました。
強い衝撃を受けた一方で、そのときに法学の道へ進むことを決心したわけではありません。私は中等部から本学に通っており、高等部時代には数学や化学、生物が得意で理系の道を考えた時期もありました。
しかし、私は青山学院で学び、多くの友人と同じ大学へ進みたかったことに加え、「冤罪を生み出した責任はどこにあるのだろうか」「なぜ誤った事実認定に至ってしまったのか」「法はいかに事実を扱うべきなのか」といった問いについて学び、人の役に立ちたいと考え法学部法学科への進学を決めました。
結果的に文転という形になりましたが、幅広い分野に興味を持つ私にとってその経験はむしろ学びの幅を広げるものだったと感じています。
ゼミでは会社法に挑戦 成長の一歩に
入学してからは、「法曹入門」や「法学ライティングBasic」といった法律家を目指すうえで役立つ授業が充実している点が、私にはありがたい環境でした。また外国法の授業が数多くあることも、法学への興味をより深めてくれました。
3年次になる前にゼミナール(ゼミ)を選択するにあたって、私の中で学ぶことに最も苦戦していた「会社法」を扱う増田友樹先生のゼミに入りました。社会人経験がないので、取締役会や株主総会、報酬等の制度に馴染みがなく、なかなか取りかかることに苦労していました。会社法が苦手にならないよう、とにかく学ぶモチベーションを維持したいと思い、ゼミならば楽しく学びを深めることができるだろうと志望しました。
増田ゼミでは4年後期までグループワークを基本とするため、現在もグループに分かれて、それぞれ先生が設定した課題に取り組んでいます。私のグループは「株主総会の参加人数を増やすためには何をすれば良いか」について研究しています。例えば、株主総会の参加人数が300人以上の企業について、業種や業績等の特徴を調査するほか、どのような要因が参加者数に影響するのかについて仮説を立て、検証するために必要なデータを検討しています。
河口湖で実施したゼミ合宿では、模擬裁判形式のディベートも行いました。私は原告側(会社側)に立ちましたが、争点となった一部の事実が事案資料に記載のなかった状態で議論を進めたため、限られた情報から判断する難しさを学びました。
河口湖でのゼミ合宿にて(前列中央、左から2番目が名小路さん)。
日々の授業を大切に、何事にも全力投球
将来を見据えて学外でも学習を続けています。大学の授業との両立に苦労するときもありますが、大学の学びもおろそかにはしたくありません。例えば、定期試験で理解が不十分な部分があるととても気になってしまうため、授業も真剣に取り組むよう心掛けています。
授業では先生の発言や教科書に書かれていない内容も積極的にメモしています。暗記する際に頭の中で授業を再現できるようにしておくことで、試験勉強の効率化にもつながります。また分からないことがあれば、授業後に質問し、その場で疑問を解消するようにしています。
私にとって、大学の授業はとても充実した時間です。友だちと意見を交わしたり、先生の話を対面で聞いたりできることに大きな魅力を感じています。オンライン授業やeラーニングでは得られない学びの深さや楽しさがあると実感しています。
また青山キャンパスで学べることにも大きな魅力を感じています。周辺には魅力的なお店が多く、つい足を運びたくなることもありますが、そうした楽しみをモチベーションにつなげるようにしています。例えば「試験を終えたら、友人と行こう」と目標を立てることで、日々の学習に励んでいます。
憲法からスキー実習まで 多彩な学びが得られる授業が魅力
どの科目も真剣に取り組んできましたが、特に印象に残っているのが「憲法入門」です。憲法はどの法律の基盤となる最高法規であり、私たちの生活や社会の在り方を考える上で欠かせないものです。中でも平和に関する内容は、私たちの生命や生活にも関わる重要なテーマだと感じました。
また、冤罪問題に強い関心を持っていたことから、「刑事訴訟法A」と「法社会学A・B」も印象深い授業でした。「刑事訴訟法A」では、実際の取り調べの様子を映像で学びながら、被疑者や被告人の供述調書がどのように作成され、それが裁判官の判断にどのように影響を与えるのかまで学ぶことができました。一方、「法社会学」では、統計やアンケート調査などをもとに法制度の変遷を考察し、条文を読むだけでは見えてこない「生きた法」に触れることができました。また、裁判員経験者や1985年に起きた「日本航空123便墜落事故」でご子息を亡くされた方をお招きした時もあり、座学や教科書からでは感じ取れない当事者の思いや現場の空気感に触れることができました。
印象に残っているのは法学の専門科目だけではありません。青山スタンダード科目「スポーツ運動実習(スキー)」もその一つです。中等部や高等部でもスキー合宿に参加していたことから、その経験を生かしたいと思い履修しました。数日間にわたって学部や学年を超えた交流を深めることができ、普段の授業では得難い経験となりました。
2年次に参加したスキー合宿の様子(画面左が名小路さん)。
やり抜く力と仲間との出会いが未来を支える
3歳からクラシックバレエを習い、大学3年次まで続けました。2025年11月には、幼い頃から憧れていた「くるみ割り人形」の金平糖の女王を演じ、世界的バレエダンサーの大川航矢さんとグラン・パ・ド・ドゥ(男女2人がペアになって踊る演目)にも挑戦しました。
本番直前に足を痛めながらも最後まで踊り切った経験は、目標に向かって努力を積み重ねることの大切さと、自分で決めたことを最後までやり抜く力を身につけることができたと感じています。
2025年11月のバレエ公演の様子。憧れていた配役で世界的プロダンサー大川航矢さん(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル)とペアを組み、長年の夢を叶えた。
学内では法学研究部に所属し、模擬裁判や裁判傍聴、青山祭での模擬店運営などに携わりました。青山祭では広報担当として、看板や広告の制作も担当しました。
活動は週1回でしたが、学業や受験勉強に励む中での大切な息抜きの時間でもありました。何より印象に残っているのは、法学研究部で出会った仲間たちです。活動後に集まって話をしたり、台湾や韓国へ旅行したりと、多くの時間を共に過ごしました。法学研究部は法律を学ぶ場であると同時に、大学生活を支えてくれた大切な居場所でした。
法学研究部で出会った親友たちと韓国へ旅行した際の写真(右から2番目が名小路さん)。
こうした学びや経験、人との出会いを通して、身に付けた知識や考え方を社会に還元し、一人一人の権利を守ることに貢献したいという思いは、より一層強くなりました。
冤罪の原因となるものを授業や法学研究部での活動を通して学んできた中で分かったことがあります。それは、「人の判断は必ずしも客観的情報のみから行われるわけではなく、与えられた情報やその提示方法、置かれた状況や立場、その時の心理状態など、さまざまな要因に左右される」ということです。そのため、法的判断には事実のみならず、その背景にも目を向け、真実を追究し続ける姿勢が不可欠なのではないかと考えるようになりました。
2024年度青山祭にて。法学研究部の模擬裁判後に撮影(前列中央の3人のうち、左側が名小路さん)。
私は、一つ一つの事案に真摯に向き合い、公平かつ公正な判断を下すことのできる法律家を目指しています。そのために法科大学院への進学を志望し、現在はその実現に向けて全力で準備に取り組んでいます。
法学部 法学科
AOYAMA LAWの通称をもつ青山学院大学の法学部には、「法学科」に加え、2022年度開設の「ヒューマンライツ学科」があります。
法律は、人間社会の生活すべてに直結するともいえるルールです。法律を正しく理解し、公正で客観的な判断を下せる「リーガル・マインド」は社会のあらゆる領域で求められます。AOYAMA LAWの国際性豊かな教育は青山学院大学の歴史とともに歩んできました。
法学科では、国際的・実践的なカリキュラムを通じて、専門的知識と法的正義感を備えた「法の智恵」を養います。









































































































































































































